2006年6月3日(土)「しんぶん赤旗」

主張

政策破たん

予算づくりももう限界なのか


 最終盤を迎えた通常国会の審議と並行して、来年度の予算編成が論議される時期を迎えています。小泉内閣が発足してからの五年間、「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」が六月中に閣議決定され、七月になれば概算要求の作業が始まるのが通例でした。ところが今年は違います。「骨太の方針」の検討が大幅に遅れ、七月にずれ込むのは確実です。

歳出削減の見通し立たず

 国会が忙しいためではありません。小泉内閣は「歳出・歳入一体改革」を掲げていますが、社会保障や地方財政などの歳出をどれぐらい削減するか、増税など新たな負担増をどうするのか、調整が遅れているのです。

 小泉内閣は発足以来、年金、介護、医療と、社会保障を狙い撃ちにした歳出削減を押し付けてきました。このため、「なお負担を求めるような制度改正は慎重に」という声が、政権内部からも出ています。財源の穴埋めとして狙っている消費税の大幅増税には、「来年の参院選に不利」という懸念が与党にあります。小泉内閣にとって、この矛盾は深刻です。

 根本には、小泉「改革」路線そのものの破たんがあります。行き詰まりが深いことは、小泉内閣が設置した、「社会保障の在り方に関する懇談会」が先週発表した最終報告が、具体的な対策を欠くものになったことでも明らかです。

 「懇談会」は、年金制度の「改革」が国民の批判を浴びたため、社会保障全体を「持続可能なものにしていく」と鳴り物入りで始めたものです。政府の税制調査会会長や日本経団連副会長、連合会長などが参加して、華々しくスタートしました。

 ところが最終報告は、「給付と負担の不断の見直し」「予防と自立支援の推進」などと抽象論を並べるだけで具体的な対策がありません。マスメディアからも「空回り」「何もできなかった」(「読売」)と不評です。

 もちろん具体的な政策を明らかにしないからといって、政府が国民への犠牲の押し付けを考えていないわけではありません。しかし、その本心もいい出せないところに、行き詰まりの深刻さがあります。

 この点では、小泉内閣が今年春設置した「再チャレンジ推進会議」が、具体的な対策を打ち出せなかったこととも共通しています。「推進会議」は、小泉「改革」のもとで格差と貧困の拡大が無視できなくなったため、「再挑戦の仕組み」を考えると、各省庁を総動員したものです。安倍官房長官が総裁選の目玉にしようとしているように、小泉「改革」路線の継承がその目的です。

 しかし今週発表された中間取りまとめは「働き方の複線化」だの「学び方の複線化」だのと項目を並べただけで、肝心の「再チャレンジ」の展望はしめせていません。多少目先を変えただけでは、小泉「改革」の継続が困難になっていることを逆に浮き彫りにした形です。

小泉「改革」の転換こそ

 「官から民へ」「国から地方へ」のかけ声で、財界・大企業への大盤ぶるまいと国民・地方の切りすてを続けてきた小泉「改革」は、大企業は空前の利益を上げても国民の所得は増えず、財政赤字は急速に増えるという形で、経済そのものを機能不全にしています。国民と地方に負担を転嫁するやり方では、予算編成もままならなくなっているのが本質です。

 いま必要なのは小泉「改革」路線そのものを根本から転換することです。外交ではとっくに行き詰まり、内政でも行き詰まりを深める小泉政治は、もはや続けさせること自体、国民にとって有害です。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp