2006年6月2日(金)「しんぶん赤旗」

改憲手続き法案 撤回を

衆院本会議 笠井議員の質問

(大要)


 一日の衆院本会議で日本共産党の笠井亮議員が改憲手続き法案(自公案、民主案)に対しておこなった質問(大要)は次の通りです。


 憲法改正の手続きを定める法案の国会提出は、現憲法制定後、初めてのことです。これは、憲法第九条を変えて、日本を「海外で戦争をする国」につくりかえる改憲の動きをさらに一歩進める、きわめて重大なものだといわなければなりません。しかも、国の最高法規である憲法にかかわる重要な法案を、会期末に、駆け込みで提出し、審議を推し進めようとするなど論外です。両案ともに、ただちに撤回するよう強く求めます。

国民は求めてない

 いまなぜ、改憲手続き法をつくろうというのでしょうか。この六十年、改憲手続き法がつくられてこなかったのは、国民が改憲を具体的に必要としてこなかったからです。手続き法がないことで、国民の権利が侵害された事実はどこにもありません。

 この間の世論調査でも、国民は、改憲手続き法の制定を国政の重要課題とはみておりません。改憲の焦点となっている九条は、「変えるべきではない」という声が多数です。その九条改憲のための手続き法をつくることは、国民の要求に反するものにほかなりません。

 「具体的な改憲構想とは切り離して、公正、中立な制度をつくる」といっても、自民党はすでに昨年十一月、「新憲法草案」を正式に決定し、憲法調査会長も、改憲手続き法は「改憲の準備に直結する」と明言しています。民主党は来年、独自の改憲案をつくると幹事長が発言し、公明党も、加憲案を今年秋に出すとしています。まさに今回の法案提出は、単なる形式的な手続き法づくりではなく、現に進行している改憲案づくりと密接不可分に結びついていることは、まぎれもない事実ではありませんか。

九条改憲と不可分

 問題は、各党がどんな憲法改定をめざそうとしているかです。自民党の「新憲法草案」は、戦力不保持、交戦権否認を定めた九条二項を削除し、「自衛軍」の保持と海外での武力行使を可能にする規定を盛り込んでいます。集団的自衛権の行使ができるようにし、アメリカがおこす戦争に参戦し、武力行使を可能にしようということです。また、「新憲法草案」は、国民に国や社会を守るといって、新たな義務や責務を強要することを盛り込んでいます。これは、国民が国家権力を縛るという人類が到達した立憲主義を否定するものです。

 民主党は「党としては改憲するかしないかの決定はしていない」といいますが、昨年十月に発表した「憲法提言」は「制約された自衛権」、武力行使を含む国連多国籍軍への参加などに触れています。党として九条改憲を方向づけることではありませんか。

 公明党も「一項、二項は残すから九条改憲ではない」と主張していますが、三項を加えて自衛隊の存在と国際貢献のあり方を明記するということは、結局、九条を改憲することになるのではありませんか。

 憲法九条は、日本が侵略戦争の反省にたって、世界に発した「不戦の宣言」であり、二十一世紀に日本がアジアや世界の諸国とともに平和を築いていくための貴重な指針です。その九条を改変し、アメリカの先制攻撃の戦争に参戦するために、自衛隊を「戦争のできる軍隊」にし、日本を「戦争をする国」につくりかえるような危険な道を決してとるべきではありません。日本共産党は、憲法を守り、いまこそ、日本の国づくりと平和のために生かすことを強く主張するものです。

 わが党は、憲法改正手続き法をつくること自体に反対ですが、両法案の内容についていえば、最大の問題は、改憲推進勢力にとって改憲案を通しやすい可能なあらゆる仕組みとなっていることです。加えて、改憲案を論議する常設機関として「憲法審査会」を設置し、この法案と連続的に改憲の流れを推し進めようとするものです。具体的に三点をただしたい。

意見表明に制限も

 第一に、国民の自由な意見表明、憲法にかかわる運動を制限している問題です。与党案は、「公務員及び教育者がその地位を利用して国民投票運動をすることはできない」としています。規制対象は、全国で約四百万人もの公務員、約百三十万人もの教育者に及びます。これだけ多数の国民、しかも憲法順守義務を負い、それを宣誓して働いている人々が、憲法改正についての言論・表現活動を委縮させられるのは異常なことです。さらに「買収罪」などの罰則も設けています。なぜ規制や罰則をかけるのですか。

 民主党案は、国家公務員法などの「政治活動の制限」規定で対処するとしていますが、そもそもこれは憲法違反の規定であり、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」にも反する規定です。憲法改正という場面でなぜこの規定を適用するのですか。

宣伝も改憲派有利

 第二は、改憲推進の大キャンペーンができる仕組みの問題です。国会に設置するとしている広報機関は、改憲に賛成した議員が圧倒的にしめる構成であり、その運営、パンフレット作製など、改憲に賛成した議員が有利に進めることが可能な仕組みです。また、政党等による無料のテレビ、ラジオのCMや新聞広告は、所属国会議員数を踏まえて配分されるため、改憲に賛成した政党が圧倒的に利用できるものになります。さらにテレビ・ラジオの有料CMも、改憲を推進している資金力のある財界団体などが、買い占めることができる一方、資金力のない国民はメディアから締め出されることになりかねません。

 メディア規制は削除したといいますが、逆にマスメディアを改憲キャンペーンに協力させる仕組みではありませんか。これで公正・中立な制度といえるのですか。

2割台で「過半数」

 第三に、改憲案の国民の承認に関する「過半数」の意味についてです。与党案は、なぜ、有効投票総数の過半数としたのですか。民主党案は、なぜ、投票総数の過半数としたのですか。最低投票率を設けなかったのはなぜですか。

 与党案では、例えば投票率が五割だった場合、二割台の賛成で改憲案が承認されることにもなりかねません。民主案も同様です。これで、国民の意思をくみ尽くすといえるのか。最低限の国民の賛成で、改憲案を通そうという意図があるからではないか。

 いま、全国では、九条改悪に反対する広範な運動が、党派を超えて広がっています。国会がやるべきは、この願いを踏みにじって改憲を推し進めることではありません。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp