2006年5月30日(火)「しんぶん赤旗」

笠井氏が主張 NHK討論 詳報

改憲手続き法案 撤回しかない


 国民投票法制を含む改憲手続き法案の国会審議入りを前に、二十八日放映のNHK「日曜討論」で、各党代表が同法案について議論しました。日本共産党の笠井亮衆院議員は、法案の撤回を強く求めました。


会期末提出は論外

 笠井氏が指摘した第一は、「会期末まであと実質十五日しかない中で戦後初めて憲法に直接かかわる法案を出すこと自体論外だ」という点です。

 改憲のための国民投票は憲法九六条に規定されていますが、戦後、国会に提出されたことは一度もありません。「国民が具体的な改憲を必要としてこなかった。だからその手続き法を必要としてこなかった」(笠井氏)からです。

 笠井氏は「それは今も変わっていない」と強調しました。

九条改憲と地続き

 第二は、改憲手続き法案が「単なる形式的な手続きではなく、憲法九条を焦点にしてそれを変えて『戦争をする国』にするものだ」(笠井氏)という点です。

 自民党は昨年十一月に「新憲法草案」を発表、民主党も「憲法提言」を出し、公明党は秋に「加憲」案を発表します。

 笠井氏はこうした動きを紹介しながら、「(手続き法案は)実際には改憲という問題と地続きにつながっている。今国会で言うと教育基本法改悪案、米軍再編、共謀罪など一連のものは全部つながっている」と指摘。「まず(法案の)撤回を強く求めたい」とのべました。

 自民党の保岡興治衆院議員は「憲法改正の手続きであるから九条と関係ないことはない」と発言。その一方で、「できるだけ早く公正中立なルールを」とのべました。

 笠井氏はこの主張に対し、「具体的に改憲を議論する前にというが、すでに自民党は改憲案を出している。そのもとで公正中立と言われてもそういう自民党が提案するルールづくりが本当に公正かというと、そうなっていない」と批判しました。

改憲ハードル低く

 法案の中身に議論が移り、笠井氏は「作ること自体に反対だ」と前置きした上で、「法案の中身について言うと、改憲をいかに通しやすくするかというものになっていて、国民の意見をくみ尽くすという点では大問題がある」とのべました。

 第一は、討論のテーマになった有権者の年齢問題について、笠井氏は「サミット参加国も含めて、大体(選挙権は)十八歳からだ。こういう問題が争点になること自体が日本の政治がいかに遅れているかということを示すものだ」と指摘。

 第二は、改憲案承認の基準になる「過半数の賛成」の意味です。笠井氏は、「改憲を具体的にやろうという勢力がハードルを下げ、少ない賛成で通したいということになっている」とのべ、「(有効投票総数の過半数とした)与党案なら、国民の五割が投票したとして、そのうち一割が白票なら(有権者の)二割の賛成で改憲が通るということになる。これは国民の意見がくみ尽くされるかというとそんなものではない」とのべました。

改憲案の広報まで

 与党案では、公務員や教員の「地位利用による国民投票運動」が禁止されています。

 笠井氏は「学校の公民の授業で九条を教えたら『地位利用』になるのかと弁護士会の討論で質問が出た」と紹介。「自民、公明の答えは『そうならないようにしたい』ということでしたが、法律上何の担保もない」と批判しました。

 公明党の斉藤鉄夫衆院議員が「授業で先生が自分の意見をいうのは『意見の表明』の範囲」と発言。これに対し、笠井氏は「どこにその法律上の担保があるのか」と反論しました。

 一方で、与党・民主両案とも、国民投票の際に広報協議会をつくり、改憲案の周知徹底をはかるとしている問題があります。笠井氏は「協議会の構成も改憲派が多数を占める。(作製する)パンフレットも、改憲案そのものを三分の一、賛成意見を三分の一、反対意見を三分の一と、三分の二は改憲の立場が出る。これでキャンペーンされる」とのべ、ここにも「改憲案を通りやすくする狙いが出ている」と指摘しました。


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