2006年5月10日(水)「しんぶん赤旗」

牛乳生産過剰 どう考える?


 〈問い〉 今、北海道では、牛乳生産過剰ということで大問題になっています。知り合いの酪農家は「どうなることやら」と途方にくれています。捨てるなどとはもったいなくてしかたありません。この状況の打開策をどう考えますか?(北海道・一読者)

 〈答え〉 生乳を大量に廃棄しているというニュースに、多くの国民は心を痛めています。背景には、牛乳消費の低迷があると指摘されています。実際、昨年の牛乳の消費量は前年比3%減っています。飲料品消費の多様化におされた形ですが、雪印のように乳業メーカーの不祥事も、要因の一つです。

 乳製品の輸入増も大きな問題です。牛乳・乳製品の自給率は一貫して低下し(1985年85%、90年78%、95年72%、2000年68%、04年67%)、乳製品の輸入量(生乳換算)は90年の224万トンから04年には399万トンに増えています。この間、需要も増えましたが、そのほとんどが乳製品で、その多くを輸入乳製品が占めてきたのです。

 生乳が余った場合、保管の可能な加工用に回して需給調整するのが有力な手段ですが、乳製品の輸入増がその道を狭めてきたことも、生乳の過剰問題を激化させました。

 欧米では、自国の牛乳・乳製品の生産を手厚く保護し、乳製品の輸入を完全自由化している国はありません。

 日本共産党は、牛乳・乳製品の自給率向上は国政の大事な課題であり、乳製品の輸入については歯止め措置をとるべきだと考えます。

 生産面での構造的な問題にも目を向ける必要があります。日本の酪農は、政府の酪農近代化計画などにより、自給飼料の生産を放棄し、輸入飼料・濃厚飼料に依存した生産拡大路線を走らされました。

 それが、糞尿による環境悪化などをもたらし、持続可能な生産を脅かす事態まで生み出しました。また、遺伝子組み換えや抗生物質、残留農薬を含む輸入飼料の使用は、安全性への不安を広げ、消費低迷の要因にもなってきました。乳価の引き下げも、効率最優先の生産拡大を促進させました。

 環境との調和や牛の健康、牛乳の安全性を重視した酪農家の生産努力もされていますが、政府・農政当局は、大規模化路線をやめていません。

 当面の緊急策としては、牛乳の消費拡大の取り組みや海外援助に振り向けることなどが必要ですが、根本的には、輸入飼料に依存した生乳の生産構造を、自給飼料を中心にした生産体制へ転換することが求められます。

 そのためにも、生産段階だけではなく、販売、加工、流通、消費の各段階で「良質、安全、安心な牛乳」とは何なのかを含めて再検討し、国産酪農を守り育てる国民的合意を広げることが大事です。(橋)

 〔2006・5・10(水)〕


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