2006年5月8日(月)「しんぶん赤旗」

米軍再編の沖縄は

政府、「負担軽減」言うが

1800メートル滑走路新設

実戦部隊そのまま


 日米両政府が一日に決定した在日米軍再編の「最終報告」―。日本政府は「沖縄の負担軽減の具体的な道筋が開けた」(麻生太郎外相)などとし、その「徹底実施」に向けた動きを強めています。沖縄県の稲嶺恵一知事は報告に盛り込まれたキャンプ・シュワブ沿岸部の新基地建設を「容認できない」とする一方、それ以外は「高く評価する」と表明しています(四日)。沖縄の再編計画を検証します。(竹下岳)


地図

 「最終報告」は、米海兵隊普天間基地に代えてシュワブ沿岸部に新たに建設する航空基地の概要を示しました。(1)V字形の二本の滑走路の配置(2)滑走路の長さはそれぞれ千八百メートル(3)支援施設(港湾など)の建設(4)工法は埋め立て―などというものです。

オスプレイを想定

 海兵隊の次期主力機であるMV22オスプレイ侵攻輸送機の配備を想定して滑走路の長さを千八百メートルにするなど、「負担軽減」どころか、最新鋭基地の建設です。

 政府は、この新基地建設で四月七日に地元・名護市など五つの周辺自治体の合意を得ました。

 ところが、これら自治体の首長は、地元住民らから「爆音や墜落の危険を避ける保障はない」と猛反発を受けました。名護市の島袋吉和市長は千八百メートルという滑走路の長さについては合意していないとし、「極めて遺憾」と表明。稲嶺知事は「緊急的措置」として、今回の計画の陸上部分への「暫定ヘリポート建設」を提案しました。

 「最終報告」は「この施設から戦闘機を運用する計画はない」としていますが、これもごまかしです。普天間基地では、沖縄周辺に空母が展開する場合などに艦載機が離着陸訓練を行っています。他の場所から戦闘機が飛来し、訓練する危険性は排除されていません。

「資金貢献」も要求

 「最終報告」は▽海兵隊員約八千人とその家族約九千人のグアム移転▽そのためのグアムでの基地建設費用は総額百二・七億ドル(約一兆二千億円)で、うち日本側負担は六十・九億ドル(約七千億円)―と明記しました。

 移転する部隊として、第三海兵遠征軍司令部=指揮部隊(キャンプ・コートニー)をはじめ、第三海兵師団(同)、第三海兵兵たん群(牧港補給基地)、第一海兵航空団(キャンプ瑞慶覧)、第一二海兵連隊(キャンプ・ハンセン)の各司令部を挙げています。

 爆音、事故、犯罪、環境汚染などの基地被害の元凶である実戦部隊は挙がっていません。

 しかも、同遠征軍司令部に代わって第三海兵旅団司令部が沖縄に残ります。「最終報告」は、沖縄に残る兵力は司令部と陸上、航空、兵たんの各実戦部隊で構成するとしています。名称・規模が変わるだけで、基本構成は維持されます。

 グアムに移る海兵隊も日本が提供する高速輸送艦などを使い、沖縄との一体性を確保します。「沖縄の負担軽減」とは無縁の、海兵隊基地のグアムへの拡大です。

 「最終報告」はグアムへの移転が「日本の資金的貢献に懸かっている」とし、日本側に巨額の負担を求めていますが、道理は全くありません。

SACO焼き直し

 「最終報告」は、米空軍嘉手納基地以南の六基地(表)について「全面的又は部分的な返還が検討される」としています。しかしそのうち五基地は一九九六年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意で「返還」などが決まっていたもので、その焼き直しにすぎません。

 SACO合意は、普天間基地の名護市辺野古沖移転など米軍基地の県内移転=たらい回しを決め、県民の強い反発で破たんしています。今回も、六基地すべてに県内移転の条件が付けられており、返還期限も示されていません。

 「最終報告」は「全体的なパッケージの中で、沖縄に関連する再編案は、相互に結びついている」と強調。六基地の返還は、シュワブ沿岸部の新基地建設や、海兵隊の「グアムへの移転完了に懸かっている」と述べています。何の保障もない基地「返還」を口実に受け入れを迫るやり方であり、通用しません。

軍事一体化ねらう

 現在、沖縄県内に米軍と自衛隊の共同使用基地は存在しません。ところが「最終報告」は、キャンプ・ハンセンと嘉手納基地を自衛隊が共同使用することを明記しました。在日米軍再編で最重要課題の一つに位置付けられている日米の軍事融合・一体化を沖縄でも本格的に進める狙いです。

 キャンプ・ハンセンには、すでに陸上自衛隊の連絡官が常駐しています。陸自のイラク派兵のための軍事教練や、グアムでの都市型戦闘訓練などで海兵隊との連絡調整を行ってきました。

 「最終報告」は、キャンプ・ハンセンについて「施設整備を必要としない共同使用は、二〇〇六年から可能」としています。将来は施設整備を進め、自衛隊を常駐させる狙いがうかがえます。

 嘉手納基地では、米軍機の爆音軽減を理由に本土への訓練移転を行う一方、航空自衛隊との共同訓練を進めます。このため、負担の軽減には一切なりません。

 両基地の日米共同使用に対し、周辺自治体は一斉に反対の声を上げています。

図


表

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