2006年5月8日(月)「しんぶん赤旗」

主張

再チャレンジ推進会議

弱肉強食の政治変えなければ


 小泉内閣が三月末に設置した「多様な機会のある社会」(通称「再チャレンジ」)推進会議(議長・安倍晋三官房長官)が今月、中間報告をまとめる予定です。

 小泉内閣は「再挑戦できる社会」を「構造改革」の看板に掲げてきました。それにもかかわらず、政権最終盤に至ってなお、「再チャレンジ」「多様な機会」の推進を掲げざるを得ない―。

 格差と貧困が広がり、政府も無視できないほど「機会」の喪失が進んでいることを示しています。

機会はいったいどこに

 安倍官房長官の発表によると、会議で出ている主な政策提言は次の通りです。企業家の再起を妨げる多重債務の防止。多重債務に陥る前に早期倒産するための相談窓口の整備。ハローワークなど公的支援の一元化で若者・女性の再チャレンジ支援。団塊の世代は定年帰農で―。

 小泉「構造改革」の路線を改めるような内容ではありません。

 「構造改革」は一握りの「勝ち組」と圧倒的多数の「負け組」を生み出し、格差と貧困の広がりが大きな社会問題となっています。

 OECD(経済協力開発機構)の分析によると、それぞれの国の生活水準に照らした相対的な貧困率で国際比較すれば、日本は上から五番目の高さです。

 生活保護の受給世帯は百万を超えています。格差問題に詳しい橘木俊詔京大教授によると、絶対的な貧困を測る指標として生活保護の基準以下の所得しかない人の割合を見ると、一九九六年の11・2%から〇二年には15・7%に増加しました。

 相対的にも絶対的にも貧困が深刻になっていることは明らかです。

 この十年で正社員は四百万人減り、非正社員が六百万人増加しました。とりわけ若者の非正規雇用が急増し、二人に一人に達しています。

 いったん非正規雇用になると正規雇用に移ることは非常に困難です。

 高齢者の所得格差が人生の結果の不平等を反映しているのだとすれば、人生のスタート時点における若者の雇用格差の拡大は機会の不平等の広がりを反映しています。

 企業の廃業率は小泉内閣発足後に跳ね上がりました。一九八〇年代後半から低迷を続ける開業率は横ばいです。廃業率は開業率を大きく上回り、その差は過去最大となっています(〇六年版中小企業白書)。「構造改革」が地域経済を疲弊させた結果の表れです。

 「いったいどこに『再チャレンジ』の機会があるのか」というのが、雇用と営業をめぐる現実です。

「構造改革」に終止符を

 小泉内閣は「規制緩和こそが機会の平等を保障する」(竹中総務相)と言ってきました。「規制緩和万能論」の典型的な主張です。

 その実態は雇用分野の規制緩和によく表れています。小泉内閣は第一に派遣、第二に有期雇用の規制緩和を掲げ、非正規雇用を大幅に増やす「改革」を進めてきました。他方で企業法制を規制緩和し、解雇・リストラを後押ししてきました。

 こんな規制緩和が保障したのは財界・大企業の利益の「機会」と「自由」にほかなりません。大企業が雇用を好き勝手にする自由を拡大する一方、労働者、若者の選択の自由と働く権利を踏みにじりました。

 格差と貧困を広げ、国民、とくに若者から機会と希望を奪う大もとに、弱肉強食の「構造改革」があります。これに終止符を打たない限り、国民の「多様な機会」はますます失われていきます。


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