2006年5月4日(木)「しんぶん赤旗」

憲法改悪・国民投票法案

国会の動きは いま

笠井衆院議員に聞く(下)

改憲に有利な仕組みに


 ――自公民各党は改憲の手続きには「中立・公正」なルールが必要だと主張しますが…。

 笠井 自民党の船田元・憲法調査会長は「改憲論が出そろわないうちに手続き法をつくらないと公正・中立なものにならない」(憲法問題各党討論会)といっています。しかし、自分たちは改憲案を出しておいて、こういう議論は成り立ちません。

 実際、この間の憲法調査特別委理事懇談会での「論点整理」の協議を通じて、国民投票法案を推進する勢力が自分たちの改憲案を念頭において、いかにそれを通しやすいものにしようとしているか―具体的な仕組みづくりでもよこしまだということが明らかになりました。

 つまり、改憲派に有利な形で改憲案を国民に周知・広報し、国民の運動やマスメディアはできるだけ規制する、そのうえでハードルを下げて最低限の賛成で改憲案が通るようにする、というものです。

 たとえば、周知・広報機関をつくることで、自民・公明と民主も一致したのですが、構成は改憲派だけで三分の二以上を占め、意思決定できるようにしています。

 投票にあたっての国民の運動規制でも、自公案は選管職員以外に裁判官、検察官、会計検査官、警察官、税務署員と禁止対象が広い。公務員・教育者の「地位利用」禁止は、民主党も含めて盛りこんでいますが、なにをもって「地位利用」か不明です。大学教授が授業で憲法の重要性さえ教えられないことになりかねません。

 投票の成立というハードルの点でも、与党案は最低投票率を設けません。岩国市の住民投票は50%を切ったら無効でしたが、どんなに低い投票率でも成立にしようというのです。成立要件である過半数も「有効投票総数」ですし、○×をつけさせて白票は無効にしようとしています。そんなことでたとえ改憲を押しとおしても、その正当性そのものが問われることになります。

 ――憲法調査特別委では、メディア規制についての参考人質疑もありましたが…。

 笠井 参考人はこぞって反対でした。戦争の教訓から憲法二一条の「表現の自由」規定ができ、戦前、マスコミが戦争に加担した反省にたって「倫理綱領」をもっている。法案に「自主規制」でも書いてもらいたくないといっていました。私は「規制を許さないためにも、マスメディアは本来の役割を発揮してほしい」と要請しておきました。

 一九九八年の参院選挙で自民党が惨敗した後、「報道機関に関する意見交換会」という形で、自民党に呼びつけられ、査問に近いような場になったと、雑誌協会代表がのべていたのも衝撃的でした。

  ――民主党についてはどうですか。

 笠井 海外での武力行使を可能にする集団的自衛権まで認めようという点や、国民投票法案をつくる方向では、自民党などと同じです。

 国民投票法案を最初にまとめたのは、小沢一郎氏が党首をつとめた自由党でした。民主党としては、法案について最終的にまとめきれていないということですが、自民・公明案と段々と差が縮まっていると感じます。

 ――国民投票法案に対するたたかいを含めて、改憲阻止の展望はどうでしょうか。

 笠井 与党は数の力をたのみに押しきろうとしていますが、国民が本質、狙いを知れば許さないたたかいにつながっていくと思います。

 国民投票法案は、連休明けに引き続き「論点整理」の協議をすることになっています。予断は許さないと思いますが、世論と運動は確実に国会に響いています。論戦で、与党のごまかしを打ち破っていきたい。

 改憲派が九条改憲を本丸としているなかで、われわれも九条改憲を許さないという世論と運動を起こすことが大事だと思います。世界とのかかわりでも、イラク戦争をへてニューヨークでも三十五万人も集まった反戦デモがありました。国連憲章にもとづく平和の世界秩序を多くの人が求めているなかで、九条の果たす役割はますます重要になっています。このことを大いに押し出して、国民的な議論を高めていくことが改憲派のたくらみを阻止する力になると思います。(おわり)


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