2006年4月30日(日)「しんぶん赤旗」

主張

投資サービス法案

大きな抜け穴が開いている


 金融商品取引法案(いわゆる投資サービス法案)の審議が衆院の財務金融委員会で続いています。金融庁は法案について、縦割り業法を見直して法制度のすき間を埋め投資家を保護する制度だと説明しています。

 しかし法案は、外国証券業者、投資顧問業、抵当証券業、金融先物取引の四法を廃止して取り込んだだけで、銀行法や保険業法などほかの業法は残しています。深刻な被害を発生させている銀行や保険、商品先物取引、海外商品先物取引を枠組みの外に置いています。

紛争多い銀行・保険

 二十七日、三井住友銀行が金融庁から一部業務停止の行政処分を言い渡されました。三井住友が融資し、担保を取っている中小企業に、複雑な仕組みで投機性が高い金融派生商品(デリバティブ)を無理やり契約させ、大きな損失を与えました。

 資金繰りに苦しむ中小企業の生命線を握る銀行が、圧倒的に有利な立場を悪用した卑劣な商法です。

 銀行にはバブル期に保険会社と組んで売り込んだ「融資一体型変額保険」による被害への反省もありません。最近も「変額年金」の窓口販売解禁を受けて「定期預金より有利だ」とお年寄りに売りつけています。

 金融派生商品や個人年金保険の販売は大手銀行の収益の柱です。今後も同様の被害が予想されます。

 大銀行は預金商品でも「特約」付きの定期預金など複雑な仕組みを導入しています。これらは大きな損失を被る危険があり、「こんな金融商品には手を出すな」と雑誌で警告されています。しかし、すでに大量に契約されるヒット商品になっており、今後の被害の拡大が心配です。

 ことし一―三月に金融庁に寄せられた金融サービスについての相談の六割が銀行がらみです。国民生活センターの調査では、過去三年間にトラブルを経験した金融機関として、証券会社に次いで銀行と生命保険会社が二位と三位を占めています。

 投資サービス法案は金融トラブルの「主役」をはずしています。銀行と保険を法案に組み込んで、漏れなく対象にすべきです。

 業態の枠を超えた金融自由化の方針を答申した金融制度調査会が、金融商品を横断的に規制する「金融サービス法」の検討を提言して九年。金融審議会が「預貯金、保険、融資といった伝統的な金融商品をはじめとして」、金融サービス法の対象に「全て含まれるべきである」と明記してから七年も過ぎています。

 大幅な規制緩和が進む一方、今日に至っても、これほど消費者保護に及び腰なのは、政府が業界の既得権益を優先しているからです。

 業界利益の優先は「不招請勧誘」の扱いにも表れています。勧誘を望まない消費者に訪問や電話で勧誘する不招請勧誘の厳格な規制は世界の流れです。法案はその流れに逆らって、「政令で定めるもの」以外は自由にできるようにしています。

 金融庁は、不招請勧誘を禁止すると「営業の自由を制限する」からだと答弁しました。「貯蓄から投資へ」の看板を掲げる小泉内閣が、業界利益に軸足を置いていることが消費者保護の最大の障害となっています。

国民の信頼得られず

 関係業界の都合で規制の抜け穴をつくり、消費者の利益をないがしろにするやり方では、市場そのものへの国民の信頼も得られません。

 「事前規制から事後規制へ」という標語に象徴されるような、深刻な被害が発生してから対応するやり方を根本から改める必要があります。


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