2006年4月17日(月)「しんぶん赤旗」

NHK日曜討論

市田書記局長の発言

(大要)


 日本共産党の市田忠義書記局長は十六日、NHK「日曜討論」に出席し、「行革推進」法案や教育基本法改悪問題など後半国会にどう臨むかについて各党幹事長と討論しました。他党からは自民党・武部勤、公明党・冬柴鉄三、民主党・鳩山由紀夫、社民党・又市征治の各氏が出席しました。


民主・小沢新体制

「対立軸」の中身が問われる

 討論ではまず、小沢一郎氏が代表になった民主党の新体制がテーマになりました。鳩山氏は「自民党に対する違いをはっきり示す」と発言。与党側は「代表選びでは、政策論争はほとんどなかった」(武部氏)「対立軸を明らかにすると言うが、まったく示されていない」(冬柴氏)と述べました。

 市田氏は「問題は対立軸の中身だ」として、次のように述べました。

 市田 小沢さんの持論は、社会保障の基礎的部分は消費税で(まかなう)と(いうことです)。そうなると税率が二ケタ台になる。また、国連決議があれば、(自衛隊の)海外での武力行使が可能だという点では、自民党の路線と国政の基本問題では同じ土俵だと思います。大企業中心、アメリカいいなりという自民党政治の古い枠組みに手をつけないで、「政権さえ変われば」と言いますが、それで政治が変わるのか。政治の中身が問われています。

 医療改悪法案をめぐる民主党の審議拒否について、冬柴氏が「理由なしで審議拒否した」と批判。市田氏は、次のように述べました。

 市田 自分の出した法案が先に審議されないからといって医療改革法案の審議をボイコットするというのはよくない。私たちからすれば医療改革法案の中身は悪いし、与党はいいと思っておられる。それは審議を通じて、善悪を明らかにしていく。もちろん与党がルールを破ったら別ですが、それ以外は審議を通じて明らかにするのが本来のあり方です。

「行革推進」法案

国民の財産と権利を脅かす

 公務員削減などを盛り込んだ「行革推進」法案について、武部氏は十九日に衆院行革特別委員会で採決し、二十日には参院に送付する意向を表明しました。

 冬柴氏は「われわれは五年で(公務員数を)5%純減する。民主は何%減らすのか」とし、鳩山氏は「(人件費を)三年で二割(削減)は十分できる。五年間で三割なら減らせる。十年で五割減らすくらいの目標で行動する」と述べました。

 「どちらがより減らせるかという議論になっている」と司会者に問われ、市田氏は次のように答えました。

 市田 今度の「行革推進」法案の一番の本質を一言でいうと、国民サービスを切り捨てて、国民の財産と権利を脅かすという点にあります。

 国家公務員の出先機関を減らす。労働基準監督官は二千八百九十人しかいません。これでは、毎日、一人の監督官が一つの事業所を訪問するとして、全部を訪問してサービス残業の実態、劣悪な労働条件を調べるのに四年二カ月かかります。大企業の横暴を規制するための下請け代金の検査官もわずか四十六人(中小企業分)しかいません。

 地方公務員の問題で言うと、三百万人のうち二百万人は国が基準を定めています。これは全部、(国民の)財産や権利にかかわるものばかりです。この見直しでどういうところが減らされるか。

 小中学校の教員でしょ。消防士は今でも基準の75%しか満たしていないのに減らす。生活保護のケースワーカーも二千二百人足りないのに減らす。国民の暮らしとか安全にかかわる分野を減らすやり方はまずい。

 武部氏は「民間でできることは民間でやって何が悪いのか」と述べました。市田氏は、次のように述べました。

 市田 今度、保育士の配置基準が見直されます。公立を民間に移しても、(基準の)見直しをすれば、サービスは同じように低下する。法律にちゃんとそう書いてある。そういう言い方したらだめですよ。

 小中学校の教員でも、政府自身、中教審自身が「少人数学級は当然だ」と言い、一時は三十五人以下学級を検討していたのに、今度の「行革推進」法案でそれが消えてしまって、生徒や児童の減少を上回る教員の削減をやるわけでしょ。サービス低下そのものじゃないですか。

 冬柴氏は「抽象的な批判だ」「公務員削減にアレルギー」と発言。市田氏は、次のように反論しました。

 市田 冬柴さんは、(共産党は)抽象的なことばかりと言ったが、私は具体的に小中学校の教員や消防士やケースワーカーの問題について述べました。

 それから公務員を減らすのに共産党はいつも反対だと(言うが)、そんなことないですよ。国家公務員の四割を占めるのは防衛庁と自衛隊なんですよ。こういうところは減らしなさい(と主張している)。公安調査庁、スパイ活動ばっかりやってるようなところはなくす、高級官僚を減らしなさいと明確に言っているわけで、そういうことを言ってもらったら困ります。

 これに対し、冬柴氏は一言も反論できませんでした。

教育基本法改悪

「愛国心」明記は内心の自由侵す

 次に、与党が十三日に正式決定した教育基本法改悪案に話題が移り、武部氏は「早く法案を提出できるようにして、今国会で成立させたい」と述べました。

 市田氏は次のように述べました。

 市田 (教育基本法改悪には)反対です。与党案の最大の眼目は、「教育の目標」に「我が国と郷土を愛する…態度を養う」と明記したことです。どういう修飾をつけてどういう説明をしようとも、国を愛するという愛国心の問題は、一人ひとりの国民の自主性に委ねるべきです。愛し方をどうするか、国家が法律で定めるのは一人ひとりの内心の自由を侵すことにつながると思うんですね。

 東京都で例えば、「日の丸・君が代」について、学校で先生が「君が代」を歌わなかったら処分される。口の開け方、歌っても小さな開け方だったら問題だということまでやられるわけだし、「態度を養う」ということになれば、どういう態度が必要なのか一律的な基準が設けられて教えるということになるわけですから、重大な問題を含んでいる。

 もう一つは、「教育振興基本計画」を決めるという条文が盛り込まれている。「教育は、不当な支配に服することなく」という文言は残されたけれども、こういう形で教育内容に国家が介入することになるという点でも重大な問題を含んでいる。私たちは反対です。

 冬柴氏は「危ぐは払しょくされている」などと弁明。「学校教育と勤労が結びついてなかったのがニートを生んできた一つの原因」と改悪案を正当化しようとしました。

 鳩山氏は「教育基本法の改正は本来、憲法の改正と同時にやるべきだ」と発言。武部氏は「それなら、憲法改正の手続き法案である国民投票法案について早くやるということで協力してほしい」と述べました。

 司会者から「最近の世論調査では、教育基本法そのものは見直した方がいいという意見の方が多くなっているが」と問われ、市田氏は次のように述べました。

 市田 同時に、教育基本法を読んだことがないというのも圧倒的なんですよ。ぜひ教育基本法を国民のみなさんにもお読みいただきたい。

 いったい教育基本法のどこに問題があるのか、ぜんぜん与党のみなさんもお話にならなかったけれども、例えば武部さんは、耐震強度偽装事件が起こったときに、“日本は精神的に非常に退廃している。教育を見直さなければならない。教育基本法の改正が必要だ”と言いました。耐震強度偽装事件と教育基本法とどこが関係があるのか。

 安倍(晋三)官房長官は、(ライブドア前社長の)堀江被告が逮捕されたとき“やっぱり教育の結果だ”と述べ、“教育基本法を改正しなければならない。国を愛する心を涵養(かんよう)する教育を”と(言いました)。

 先ほど冬柴さんは、ニートの問題まで教育基本法に原因があるかのようにおっしゃったけれども、ちゃんと今の教育基本法には「勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた…(国民の育成を期して行われなければならない)」ということも明記されているんですよ。勤労の重要性についても書かれているわけで、今の教育基本法の精神が実施されてこなかったことに問題があったのです。

 不登校や少年犯罪とか学力低下は教育基本法の責任じゃないですよ。むしろ、少人数学級を認めてこなかったとか、(授業料が払えず)高校を中退しなければならないような子どもがたくさん生まれているなど自民党政治とかかわっているんですよ。

米海兵隊グアム移転費

ごまかしで税金投入許されない

 最後に在日米軍再編に関連し在沖縄海兵隊八千人のグアム移転経費の負担問題が議論になり、市田氏は次のように述べました。

 市田 今、日本の財政がたいへんだといわれているときに、外国の領土に外国の基地を拡大強化するために、日本の税金が(注がれようとしている)。言われている話では(米側の要求は)九千億円。まあもうちょっと値切ろうかという話になっていますが、値切る話ではない。こんなものは当然、アメリカがもつべきで、しかも「(沖縄の)負担軽減」どころか、ハワイとグアムと沖縄のトライアングルでハブ的な相互補完的な戦略拠点をつくろうというのが、アメリカの戦略なんですよ。

 そのために若干向こう(グアム)に移動するだけの話で、必要とあらば、また沖縄にも戻ってくると(言う)。「八千人」(という数字)だって、国会でわれわれが追及したら、いま沖縄のどこに海兵隊が何人いるか(政府は)答えられない。そういうごまかしで日本の国民の税金を投入するのは、絶対にやるべきではありません。


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