2006年4月12日(水)「しんぶん赤旗」

主張

財政再建策

犠牲の転嫁では解決できない


 政府、自民党が相次いで財政再建に関する報告を発表しました。

 財政審が財政「改革」にかかわる長期試算をまとめ、経済財政諮問会議は「歳出・歳入一体改革」の「中間とりまとめ」を公表しました。

 自民党の研究会は「活力ある『経済・財政一体改革の設計図』」と題する中間整理をまとめています。

対立ではなく相互補完

 政府・与党の議論の中で中川自民政調会長と竹中総務相は歳出削減の優先と経済成長の重視を主張し、与謝野経財相や谷垣財務相らは増税の検討を急ぐ姿勢を示してきました。

 両者の「対立」が演出されています。実際には「拒否するならもっと増税するぞ」と脅して、くらしの予算の大規模な削減を国民に迫る茶番劇です。「対立」というより「相互補完」というべきです。

 政府、自民の財政再建策は、いずれも歳出では社会保障や公務員人件費を削減の標的にし、税制では消費税増税を織り込んだ国民への大負担増計画となっています。自民党の経済成長策の中身は、貧困と格差を急激に広げた小泉「構造改革」の「継承・発展」です。

 国民の立場から見ると、どちらのやり方も大きな苦痛のもとでしかありません。

 「大きな流れで見ると、そんなに違いがあるわけじゃない」と谷垣財務相がのべているとおりです。

 なにより、政府と自民党の財政再建策には、ここまで財政を悪化させた責任の自覚と反省が皆無です。

 今日の財政赤字をつくった元凶は、一九九〇年代以降の公共投資、軍事費の異常膨張と無駄遣い、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税による税制の空洞化です。

 小泉内閣は五年間で新たな借金を百七十兆円も増やしています。それ以前の五年間の百五十三兆円よりも借金を拡大しました。

 財政を破たんさせた責任は自民党政治にあります。しかも、これらの政策から最大の恩恵を受けてきたのは大企業・大銀行、財界にほかなりません。政府・与党の財政再建策は自らの責任を棚に上げ、「既得権益」に浴してきた財界にはいっそうの減税さえ与えながら、犠牲を国民に押し付ける巨大な責任転嫁です。

 政府・与党の「対立」は、一面で、こんな財政再建策が大きな矛盾を抱えていることを示しています。

 中川・竹中ラインの議論は、経済の高成長で税収を増加させなければ増税規模が大きくなりすぎて景気に打撃を与えるということです。与謝野・谷垣サイドは、高成長を実現できても、それ以上に長期金利が上昇して税収増より借金の利払いの方が大きくなり、結局は相当な増収策を取らなければならなくなるとしています。

 どちらにしても袋小路に落ち込む話です。財政審の試算によると長期金利が成長率を1%上回るだけで、新たに五、六兆円の財源を生みださなければ財政はさらに悪化します。

自然増収機能の回復

 法人税減税、所得税の最高税率引き下げ、株取引の減税を進める税制「改革」は、本来なら景気回復で自然に大きな増収を得られる「税収の弾性値」を急降下させてきました。

 大企業・大資産家向けのゆきすぎた減税を是正することは、税制の自然増収の機能を回復し、長期金利のわずかな上昇に左右されない道を開く上でも重要です。

 国民に犠牲を転嫁するやり方では景気に深刻な打撃となり、税収も減らしてしまいます。これを根本から切り替える必要があります。


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