2006年4月7日(金)「しんぶん赤旗」

世界遺産ゾーンに建設中

原爆ドーム見下ろすマンション

被爆者ら見直し訴え


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(写真)原爆ドームの真後ろでクレーンの位置が日々高くなる建設中のマンション=広島市中区

 原爆ドーム(広島市中区)の南東約百メートルの世界遺産のバッファゾーン(緩衝地帯)内に、ドームよりも十九メートル高い四十五メートルの十四階建てマンションの建設が進んでいます。二つの広島県原爆被害者団体協議会(坪井直、金子一士両理事長)など約六十団体に広がった「世界遺産『原爆ドーム』の景観を守る会」は、外構工事が五月中にも十二階に達すると見て、建設見直しを訴えています。

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 被爆者や市民が建設に気づいたのは昨年十二月。爆心地から南西約三十メートルの場所が建設用の幕で囲まれ、ドームの真後ろにクレーンが頭をもたげました。クレーンの位置は日々高くなり、被爆者から「爆心地のあの日、あの時を常に見下ろされているようで憤りを感じる」との声があがっています。

 坪井理事長は「われわれ被爆者が一生懸命守ろうとしているドームは、世界で唯一の核兵器廃絶のシンボル。市は何か遅れてことを進めているようで」と憤ります。ドーム周辺の町内会長などを訪問している金子理事長は「みんな立腹して『広島市は不見識だ』との答えが返ってくる」と言います。

 「守る会」はこの間、秋葉忠利市長や市議会に陳情。市の美観形成要綱に高さ規制がないため、都市計画局の高東博視局長は「高さを低くするよう求めるのは行政の限界を超えている」と弁解してきましたが、秋葉市長は三月二十九日、「法的根拠はないが、文書で建設業者に対して、高さの再考も含めて要望したい」と表明しました。

 施工主の三井不動産建設広島支店も二月二十四日、「守る会」の要請に対して「一昨年から市と話し合ってきたが、一度も高さについての話はなかった。すでに部屋は完売済みで変更は難しいが、本社にも趣旨を伝え、市との話し合いを続けたい」と答えています。

 「守る会」は署名運動やドーム前での座り込みなどの宣伝を強め、「ユネスコから世界遺産指定返上の動きが出る前に英断を」と市に要請するはがきを送る運動への協力も呼びかけています。


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