2006年4月7日(金)「しんぶん赤旗」
主張
米軍機の訓練移転
爆音被害を激増させるだけだ
防衛庁は、航空自衛隊の千歳(北海道)、百里(茨城県)、小松(石川県)、築城(福岡県)、新田原(にゅうたばる)(宮崎県)各基地の関係自治体に、米軍再編に伴う米軍機の訓練移転を受け入れるようせまっています。防衛庁の説明に、「騒音で新たな負担は受け入れられない」とつよく拒否する自治体がある一方、「大きな市民の負担を伴うものでなく安心した」との声もあります。
しかし、日本共産党仁比聡平議員の国会追及(五日参院決算委員会)で、訓練移転は、騒音と墜落の危険を飛躍的に増大させるものであることがはっきりしました。
一度に十二機が
防衛庁は、「年間使用日数や一回当たりの使用期間の制限は維持」「回数制限は撤廃」と説明します。現状と変わらないのだから問題はないとでも言いたげです。しかし、枠組みが同じでも、米軍再編に伴う米軍機の訓練移転は質も量も違います。
各基地の日米共同使用は日米合同委員会で決められています。千歳は年四回、年六十日以内、築城、新田原は年四回、年五十六日以内、小松、百里は年四回、二十八日以内です。
しかし、現実にはそのごく一部が実施されているにすぎません。
千歳は一九九八年、九九年各一回、十日程度で、その後なし。百里は九〇年、九二年、二〇〇一年、〇二年各一回、各十日程度で、その後なし。小松は九七年、九八年、二〇〇〇年、〇四年、〇五年各一回、数日程度です。新田原は九三年から九七年までと二〇〇〇年に各一回、築城は〇二年、〇四年各一回です。
訓練移転は、日米合意の上限いっぱいに訓練することが前提です。ローレス米国防副次官は「共同訓練の向上がまず目的」(〇五年十二月)と強調しています。米軍機が頻繁にやってきて、海外でたたかえる自衛隊パイロットに育てるため、共同訓練を頻繁にくりかえすのは目にみえています。
とくに、一回に使用する米軍機が大幅に増えることは重大です。
防衛庁は、一回に使用する米軍機は、「一〜五機」が「一〜七日程度」、「六機〜十二機」が「八〜十四日」と説明しています。
現状は、年一回の共同訓練であり、しかも飛来する米軍機は数機程度です。それを一度に十二機もの飛来を認め、なおかつ、二週間も使用させるというのです。米軍機の飛行が増える分だけ、騒音が激増するのはいうまでもありません。
いまでも深刻な爆音被害をさらに増大させ、住民生活の平穏を脅かす訓練移転の受け入れを、自治体・住民が拒否するのは当然の権利です。
墜落の危険増大も重大です。米軍のF15戦闘機は一月にも訓練中に海上に墜落しました。岩国基地のFA18戦闘機も三沢基地のF16戦闘機も墜落事故をくりかえしています。墜落の危険を増やすような訓練移転を認めるわけにはいきません。
日米共同訓練の枠組みは同じという防衛庁の説明は、影響を小さく見せるごまかしにすぎません。
沖縄県民は撤去要求
防衛庁は、訓練移転が沖縄県民の負担を軽減するためといいます。しかし、県民は、嘉手納町議会のF15墜落事故抗議決議(一月十八日)が「F15戦闘機部隊の撤去」を要求したように、訓練移転を求めてはいません。政府は、沖縄をだしにして、米軍機による苦痛を全国にたらい回しにするのをやめるべきです。
政府に自治体・住民の意思を示すとりくみがますます重要です。