2006年4月2日(日)「しんぶん赤旗」

障害者自立支援法スタート

どこが問題? どう対応?


 障害者自立支援法が一日から実施され、大幅な負担増に障害者・家族の不安が広がっています。(日本共産党政策委員会 秋山千尋)


サービスの後退も

 障害者自立支援法は、昨年十月、自民党、公明党が日本共産党などの反対を押しきって成立させたもの。身体・知的・精神の三障害者に対する福祉サービスを一元化するなど、関係者の声を反映した面もありますが、国の財政削減をすすめる小泉「構造改革」のもとで、応益負担の導入により障害者・家族に過酷な負担増をしいるなど重大な問題点を持つものとなっています。

 成立した二〇〇六年度予算で、公費から支出される施設への報酬が三―四割も引き下げられ、施設の運営が困難になり、結果として利用者サービスの後退を招きかねない深刻な事態も起きています。

工賃より高い利用料

 四月から、これまで応能負担だった福祉サービス利用料が定率一割負担になり、障害者に大幅な負担増がしいられます。障害が重いほど負担も重くなります。施設やグループホームの利用者は、食費と居住費(水光熱費)も全額自己負担になります。自立支援医療(これまでの更生・育成・精神通院の公費負担医療制度)も、原則一割負担になります。

 収入は障害基礎年金(一級八万三千円、二級六万六千円)のみの人や、それ以外にはわずかな工賃(月額平均七千三百円・きょうされん調査)だけという人も少なくありません。耐えがたいばかりの負担増です。

 実際、通所施設は、これまで95%の人が無料でしたが、平均で月千円から一万九千円へと十九倍もの値上げが見込まれています。工賃より高い利用料なら、生活が圧迫され、働く意欲をなくすのは当然です。すでに、北海道の旭川市では、身体と知的障害の通所施設の利用者二百五十九人中、三十人が退所の意向を表明しています。

 政府は、所得に応じて四段階の月額負担上限額(生活保護世帯はゼロ円、市町村民税非課税世帯で年収八十万円以下=低所得1=は月額一万五千円、市町村民税非課税世帯=低所得2=は月額二万四千六百円、市町村民税課税世帯は月額三万七千二百円)をもうけるなど、いくつかの軽減策を実施します。しかし、低所得1の世帯で、収入の二割にものぼる負担を強いられるなど、大幅な負担増になることに変わりありません。

 自治体独自の負担軽減策も、障害者団体のねばり強い運動によって、いくつかの自治体に広がっています。東京・荒川区では、在宅の障害者の全サービスを一割から3%に軽減することや、重度の障害者について国が定めた月額上限額を半額に軽減することになりました。こうした動きを全国に広げていくことが急務です。

 自立支援法は申請主義です。自治体に申請手続きをしなければ、軽減措置を受けられません。行政の説明が不十分なために、混乱した事態が各地でいまもって続いています。四月をこえても申請は可能であり、自治体に引き続き相談会の開催などの周知徹底をはからせることが重要です。

認定審査が必要に

 自立支援法では、サービスの利用方法も大きく変わります(十月実施)。

 福祉サービスを利用する場合は、介護保険と同じように「障害程度区分」の認定審査を受けなければなりません。

 障害者・家族の中には、これまでどおりのサービスが受けられるのか不安の声があがっています。

 障害程度区分は、介護保険のように、支給されるサービス量の上限が決められているわけでなく、あくまでも「勘案事項の一つ」です。

 市町村が長時間介護などを必要とする障害者に、十分なサービスを保障するように実施させていくことが必要です。

 市町村は遅くとも六月議会までに条例を制定して、審査会を立ち上げなければなりません。

 障害者の生活状況や支援ニーズを正しく把握するために、専門性をもったスタッフの配置などの体制を、具体化させることが重要なポイントです。

自治体財力で格差

 地域生活支援事業は、市町村(一部都道府県)が実施主体であり、十月からの実施です。半年間で二百億円しか国から補助されないため、一自治体への財源配分はごくわずかです。

 事業の対象になるのは、視覚障害者などを介助するガイドヘルパー、手話通訳派遣事業、地域活動支援センターなどですが、市町村の財政力によってサービスに格差が生じかねません。国は大幅に予算を増やし、市町村に財政支援をおこなうべきです。

 地域生活支援事業の利用料は、市町村が独自に条例等で定めることから、現行どおり無料または「応能負担」による低廉な利用料とすべきです。

 全国六千をこえる小規模作業所の安定した運営も切実な問題です。

 今年度は小規模作業所への補助金の継続を決定したものの、すでに減額に踏み出し、数年後は打ち切りを表明している県も出てきています。

 国は小規模作業所に十分な財政措置を講じ、自治体も現行の補助水準を維持させることが求められています。


減免策など共産党要求

 日本共産党は先に、「障害者自立支援法実施にむけての緊急要求」を発表しました。応益負担の撤回を要求すると同時に、だれもが必要なサービスを利用できるよう、負担上限額の引き下げをはじめ、国に負担減免策の拡充を求めています。国会では、笠井亮議員が「緊急の実態調査と負担軽減の拡充を」(衆院予算委員会、2月28日)と小泉首相に要求。小池晃議員が「国会審議でサービスの質を低下させないと言っていたのに約束違反だ」と追及して、報酬単価引き上げを要求(参院厚生労働委員会、3月22日)しています。

 東京・荒川区の事例のように各地の党地方議員も自治体に独自の負担軽減策の実施を求めて奮闘しています。


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