2006年4月2日(日)「しんぶん赤旗」

主張

幼稚園・保育所の連携

保育水準の改善へ慎重審議を


 就学前の子どもの保育・教育を担う「認定子ども園」制度を創設する法案が、国会に提出されています。

 親の就労にかかわりなく、幼稚園でも、保育所でも、ゼロ歳児から就学前の子どもを対象に保育・教育を行うことを可能にする制度です。都道府県の認定をうけ「認定子ども園」となります。

子の最善の利益第一に

 乳幼児期は、人格の基礎をつくる大切な時期です。出産・育児と仕事の両立支援とともに、すべての子どもに豊かな乳幼児期を保障するために、就学前の保育・教育を拡充することが必要です。

 しかし、法案には、見過ごせない問題点が含まれています。

 これまで確保されてきた保育水準が切り下げられる懸念です。

 法案は、職員配置や設備などの具体的な内容について、文部科学相と厚生労働相が定める「基準」を参酌して都道府県が条例で定めるとしています。

 現行の保育所と幼稚園では人員配置や設備の基準で大きな違いがあります。たとえば、給食施設です。保育所は調理室が義務付けられていますが、幼稚園は「備えるように努めなければならない」と緩やかです。

 給食には、子どもの年齢やアレルギーの有無によってきめ細かな対応が求められます。外部搬入で子どもの健康が損なわれるようなことがあってはなりません。

 認定基準が、保育・教育の水準を切り下げるのではなく、向上を目指して定められるようにしなければなりません。

 その点で、法案の目的に、子どもの視点が欠けていることは大きな問題です。

 日本政府が批准している子どもの権利条約は、子どもにかかわる制度の導入にあたって、「子どもの最善の利益が第一義的に考慮されるものとする」と明記しています。その立場からの施設や設備、職員数についての基準の確保を求めています。

 この「子どもの最善の利益」を一番に考えるという立場は、法案に先立ち実施されたモデル事業の評価の「最終まとめ」(三月三十一日公表)でも、強調されています。

 保育水準の低下ではなく、向上させるためにも、子どもの権利条約の精神を生かすことが大切です。

 就学前の子どもの保育・教育については、保育所は厚生労働省、幼稚園は文部科学省と、長期にわたって、所轄が違ってきました。政府・与党は、法案を、文部科学委員会だけの審議で早期に成立をはかろうとしていますが、これまでの経過に照らしても、慎重審議が求められています。

 法案には、これまで、保育所でとっていた利用方法や保育料の決め方で重大な変更を盛り込んでいます。「認定子ども園」の利用は施設と利用者とが直接契約し、利用料も基本的に「認定子ども園」で決定するとしています。

市場原理による悪影響

 保育所の関係者から、“財政力による優勝劣敗の市場原理が強く働く直接契約が、どうして幼児保育・教育にとって望ましいのかの説明がない”と批判の声があがっています。直接契約が引き起こす影響についての議論が欠かせません。

 重大な影響を受ける厚生分野の論議を経ないままに、法案審議が進むようなことがあってはなりません。

 十月一日からの施行ではなく、子どもの最善の利益を第一義的において、保育水準の向上をめざし、慎重審議が求められます。


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