2006年3月23日(木)「しんぶん赤旗」
主張
WBC優勝
世界の野球に新時代を開く
日本の野球が世界の頂点に――。
大リーガーをまじえた初の国別対抗戦、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を制したのは、王貞治監督が率いる「チーム・ジャパン」でした。
優勝決定戦では、オリンピック、ワールドカップの覇者キューバに対して、つねにゲームの主導権をにぎる堂々の試合運びで、一気に頂点にのぼりつめました。
気持ちをひとつにして
安定した投手力を軸に、リード・オフ・マンのイチロー選手らナインが気持ちをひとつにして、「つなぎの野球」に徹したひたむきさが、この快挙を呼び込んだといえるでしょう。「一戦一戦、納得のいく試合をしたい」との信念で、選手の持ち味を存分に引き出した王監督のさい配もみごとでした。
WBCの二十日間は「世界の野球」を知る絶好の機会ともなりました。
大リーガー八人を擁した韓国の勝負強さ、米国に勝利したメキシコの粘り、優勝候補のドミニカ共和国に競り勝ったキューバの底力など、世界の野球が多彩で高い水準にあることに、新鮮な驚きを抱いた人びとも少なくないでしょう。
その一方で、精彩を欠いていたのが米国でした。「アジアの実力」を甘くみていたのではないでしょうか。巨大な大リーグ機構を持つ“野球の本場”であり、ベストのメンバーでのぞむなら、真の実力はこんなものではないはずです。
一次リーグから二次リーグへと試合が進むにつれて、「野球は面白い」との声が高まり、引き込まれていった人びとが広がりました。この点で、初めてプロ・アマのトップ・チームが真っ向勝負を挑んだWBCの開催は、野球の世界に新しい風を吹き込みました。
今回のWBCの参加国は十六カ国・地域にとどまりました。世界の野球に新時代を開いたことは間違いありませんが、名実ともに「クラシック(最高の)」と呼ばれるための課題も、浮き彫りになった大会でした。
たとえば開催方式にかかわる問題です。大リーグの都合による開催日程や、大リーグのルールを「基準」にするやり方でよいのか、予選リーグのゾーン(地域)の分け方やリーグ戦の組み合わせはこのままでよいのか、などです。
日本やメキシコなどは審判のジャッジミスに泣かされた場面もありました。「野球がスタートした国で、こういうことがあってはならない」(王監督)との指摘もあるように、審判の統一基準と水準向上をどのようにはかっていくのかは、すぐにでも取り掛からなければならない課題だといえるでしょう。
「世界の舞台」を大事にしていきたいという選手や関係者の思いに水をさしてはなりません。三年後の〇九年に予定されている第二回大会に向けて、問題の解決と改善に力を注いでもらいたいものです。
充実への第一歩に
最初のWBCで頂点をきわめた日本の野球界ですが、安閑としてはいられません。国内での使用球とWBC試合球との大きさが違う問題も指摘されています。投手に無理な負担がかかり、打撃や守りにも影響がでていることからも、プロ野球をいかに国際基準に近づけていくのか、検討すべき課題ではないでしょうか。
「チーム・ジャパン」の活躍で大きな夢をはぐくんだWBCでした。それだけに、これを第一歩にして日本のプロ野球がさらに充実していくことを願っています。