2006年3月10日(金)「しんぶん赤旗」

米産牛肉輸入問題 この無責任ぶり

常習的違反の記録調べず再開決定

紙議員追及

食品安全委員長 「原本読んでない」

農水相 「いま初めて拝見」

厚労相 「概要は見ている」


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(写真)パネルをかかげ質問する紙智子議員=8日、参院予算委

 BSE(牛海綿状脳症)危険部位除去違反は「常習的」だった――。日本共産党の紙智子参院議員が訪米調査で入手した米国農務省のBSE違反記録(原本のコピー)には、米国内の食肉処理場で危険部位を除去しないなどの違反が常習的におこなわれていた衝撃の実態が記されていました。ところが、8日の参院予算委員会での紙議員の質問で、厚生労働相、農水相、食品安全委員長の三者が、この違反記録の原本を見ることも検討することもなく、米国産牛肉の輸入再開を決めていた重大な問題があきらかになりました。


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(写真)米国農務省のBSE違反記録資料

 BSE違反記録(ノンコンプライアンス・レコード)は、二〇〇四年一月から〇五年五月までの、米国内の六千カ所のと畜場・食肉処理場での違反事例(累計千三十六件)の詳細が記録された公文書。同記録には、日本向けに牛肉を輸出している複数の米企業が、BSE危険部位除去や月齢確認などで「常習的」違反をしていたことが明記されています。

 「この文書を大臣は見ているのか」。問いただす紙議員に、内閣府の寺田雅昭食品安全委員長は「原本は読んでおりません」。中川農水相は「全文、今初めて拝見して、膨大な資料だと思います」。川崎二郎厚生労働相も「概要は見ている」というだけ。政府は昨年八月に同報告の概要しか入手しておらず、違反記録の詳細は何も見ていなかったのです。

「審議もせず」

 食品安全委員会の寺田委員長は、昨年八月に開かれたプリオン専門調査会でも「審議はいたしておりません」とのべました。

 紙議員は、違反記録のなかから、昨年十二月以降に日本向け輸出指定をうけたカーギル・ミート社のネブラスカ州スカイラー食肉処理場と、ネブラスカビーフ社のネブラスカ州オマハ食肉処理場での違反行為の詳細をピックアップ。この二社が、危険部位除去違反など同じ違反を繰り返している事実をつきつけ、「危険部位」の除去、生後二十カ月以下の条件順守が現実に守られる保障がないことを明らかにしました。

 ネブラスカビーフ社のオマハ食肉処理場では、〇四年七月二十八日、同年八月十九日、同十月十二日、二十六日の四回、危険部位の脊髄(せきずい)除去不徹底の違反が繰り返され、米国農務省の食品安全検査局から「同社の防止対策は、違反の再発防止のために適切に実施されていない。非効果的、または不適切だ」と指摘を受けました。ところが、翌〇五年一月にも同様の違反を起こしています。

 カーギル・ミート社のネブラスカ州スカイラー食肉処理場では、牛の月齢確認をしないまま解体処理する違反が五回も繰り返されていました。

 同社では〇四年三月だけで四回、月齢三十カ月以上の牛の頭部を混入させる違反を起こし、〇四年九月には「危険部位」を切断したノコギリの洗浄、熱湯消毒を怠った違反を起こしました。

 中川農水相 川崎厚労相は、違反行為が見つかった時点で「是正されている」と弁明しました。

 紙議員は、記録を見ていない両大臣に「これのどこが是正されたっていえるんですか。繰り返されているんですよ」と追及しました。

確認せず署名

 なぜ、同じ違反が繰り返されるのか――。紙議員は、検査官が作業現場や、商品の牛肉を見ないで輸出証明書に署名する、米国の食肉処理場の検査体制の問題点もとりあげました。

 雑誌『ニューズウィーク』(ことし二月八日号)は、元検査官の証言を紹介し、事実確認なしで「輸出証明書に署名するよう会社側や米国農務省の食品安全検査局の上司から要求されることが少なくない」と報道しました。

 訪米調査した紙議員は、この問題で全米連邦獣医官協会の法律顧問、ウィリアム・ヒューズ弁護士と話し、証言を得ました。

 同氏は「問題は、検査官が回ってきた文書について批判的に要件を確認するのではなく、機械的に署名すればよいというところもあること」「時には、署名する文書があまりにも多く、自分では、要件を確認できない他人が作成した輸出証明書、その他の文書に署名せざるをえない」と語りました。

 このことは、月齢確認や危険部位除去の違反行為が、米農務省の報告書のような「例外的なもの」ではなく、構造的な問題であることを裏付けるものです。

 紙議員は、BSE違反記録や検査体制の問題点について、「米国が是正したといえば、そのとおり信じて、(政府として)きちっと調べもしない」と指摘。政府のずさんさ、重大な責任をただしました。


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