2006年3月9日(木)「しんぶん赤旗」

牛肉処理

米施設は違反常習

日本政府 記録原本見ず輸入再開


写真

(写真)質問する紙議員

紙議員が指摘

 日本向け米国産牛肉からBSE(牛海綿状脳症)危険部位が除去されていなかった問題で、米政府が指定している日本向け牛肉輸出の複数の大手食肉処理場で危険部位を除去しないなどの「違反行為」が繰り返されていたことが八日、わかりました。日本共産党の紙智子参院議員が予算委員会でとりあげたもの。紙議員は、危険部位の混入は「例外的なケースではない」と、米国に日本と同じBSE検査体制をとらせるよう川崎二郎厚生労働相、中川昭一農水相に迫りました。

 紙議員が二月中旬の訪米調査で入手した米国農務省食品安全検査局(FSIS)のBSE違反記録(二〇〇四年一月から〇五年五月まで)によると、日本向け輸出が認められているカーギルミート社のネブラスカ州スカイラー食肉施設と、ネブラスカビーフ社のネブラスカ州オマハ食肉施設で、それぞれ六回もBSE危険部位除去などでの違反行為がくりかえされていました。

 紙議員は「ネブラスカビーフ社では、FSISの記録に『対策が違反の再発を防止するために適切に実施されておらず、非効率また不適切』とまで書かれている。脊髄(せきずい)除去不徹底で何度も同じ違反が繰り返され、常習的違反行為をおこなう企業が日本向けの指定をうけている」と違反記録をつきつけました。

 川崎厚生労働相、中川農水相は、違反記録の原本ではなく、「概要」しかみていなかったことを明らかにしました。

 食品安全委員会プリオン専門調査会にも違反記録原本が提出されていませんでした。寺田雅昭食品安全委員長も「概要は説明されたが、審議はしていない」と答弁しました。


米の牛肉輸出ずさん

検査官、現場見ず証明書

紙議員示す

 危険部位除去などの違反行為をチェックする米政府の検査官が、作業も現場も見ずに輸出証明書にサインしていた――。八日の参院予算委員会で、日本共産党の紙智子参院議員は、訪米調査で直接会った全米連邦獣医官協会法律顧問のウイリアム・ヒューズ弁護士らの証言や内部告発リポートを示し、米国のずさんな検査の問題点もあきらかにしました。

 ヒューズ弁護士は、米国産牛肉の輸出検査で「必要な条件が満たされていない」と証明書への署名を拒否し処分された獣医師の資格のある上級検査官(獣医官)の弁護を担当してきました。

 同弁護士は「署名する文書があまりにも多い。獣医官は、自分では(輸出)要件を確認できず、他人が作成した輸出証明書に署名せざるをえない」と紙議員にのべています。

 紙議員は「検査官の署名の信頼性そのものが問われる重大な問題」と指摘。こうした検査の実態を確認しないで輸入再開を強行した政府の責任を追及しました。

 川崎二郎厚生労働相は、米側の輸出証明を信用するという態度に終始しました。


紙議員が入手 米食肉処理場の資料

これが「BSE違反記録」

 米国産牛肉の輸入再開後、わずか一カ月でBSE(牛海綿状脳症)の原因となる「危険部位」の混入が発覚し輸入停止に追い込まれました。日本共産党の紙智子参院議員が訪米調査で入手した「BSE違反記録」は、日本向けに牛肉を輸出している米企業が、米農務省が定めた手続きに常習的に違反している実態を浮かびあがらせました。

 資料は、米農務省食品安全検査局(FSIS)が二〇〇五年八月に公表したものです。米国が特定危険部位の除去を始めた〇四年一月から〇五年五月までの違反事例千三十六件がまとめられています。

 米国の日本向け輸出企業の違反事例は明らかにされてきませんでしたが、紙議員は資料をもとに日本向け輸出企業を割り出しました。

 昨年十二月の輸入解禁の際、日本政府は、「危険部位」の除去、生後二十カ月以下の二つの条件をつけましたが、資料は、これらの条件が守られる保証などないということを示しています。

 ■カーギル・ミート・ソリューション(ネブラスカ州スカイラー)の場合■

 〇四年三月四日 頭部が月齢三十カ月以上の牛のものであることを確認。特定危険部位のための「衛生標準作業手順」(SSOP)は踏まれていなかった。

 同年三月十日 監査官が月齢三十カ月以上の頭部を発見した。本件違反記録は、三月四日の違反記録に関連したものである。

 同年三月十一日 頭部が月齢三十カ月以上の牛のものであることを確認。

 同年三月二十四日 三つの頭部が、月齢三十カ月以上のものであることを確認。

 同年九月二十八日 バックソー(胴付きのこぎり)が分解されず百八十度の熱湯で消毒もされていないのを確認した。特定危険部位(SRM)を切断したのこぎりは、洗浄してから百八十度の熱湯で消毒することになっており、当該企業は、牛海綿状脳症(BSE)/牛肉輸出証明(BEV)プログラムの順守を怠った。

 同年十月一日 監査官が三十カ月齢以上の頭部が臓物に入っていくのに気付いた。衛生標準作業手順に記されているとおりの手続きが行われていなかった。

 ■同社(コロラド州フォート・モーガン)の場合■

 〇五年一月二十七日

 舌扁桃(へんとう)組織が舌根に残ったままの舌を観察。それを確保し、規制管理措置を講じ製造を止めた。あらゆる月齢の牛の扁桃は特定危険部位に指定されている。

 ■ネブラスカ・ビーフ(ネブラスカ州オマハ)の場合■

 〇四年七月二十八日 同社が操業前の衛生検査を完了し、USDA(米農務省)の検査に現場を開放した後、下記の違反を目にした。脊髄(せきずい)除去装置の食肉接触面に脊髄の一部および血液斑点が付着していた。内臓担当エリアでは、製品のつり上げ、冷蔵に使用されるラックの食肉接触面に、直径四分の一インチの血液斑点と油が付着していた。付着が発見されたすべての機器にUSDAの不合格タグが張られた。

 〇四年八月十九日 月齢三十カ月以上の屠(と)体から出た脊髄入りの脊柱管が見つかった。

 〇四年十月十二日

 月齢三十カ月の露出した脊髄が付着した二つの屠体が見つかった。

 〇四年十月二十六日 月齢三十カ月の牛の脊柱管と脊髄が付着した一つの屠体が見つかった。

 〇五年一月二十五日 月齢三十カ月か、それ以上と思われる屠体が低温殺菌室に入るのを目にした。屠体の冷蔵室に行き、屠体が低温殺菌室から出るのを見た。屠体の両側に頸椎(けいつい)の露出した脊髄があった。

表

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