2006年2月27日(月)「しんぶん赤旗」

自治体ぐるみのたたかいで 基地強化をはねかえそう

沖縄・全国基地闘争交流集会 志位委員長の報告(要旨)


 日本共産党の志位和夫委員長が那覇市で開かれた全国基地闘争交流集会(二十四日)で行った報告(要旨)は、次の通りです。


「米軍再編」とは

“殴り込み”機能の飛躍的強化と、日米軍事一体化

 ブッシュ政権が、地球的規模ですすめている「米軍再編」とは何か。それは、「朝鮮戦争いらいの大規模な再編」といわれているもので、つぎの二つの柱からなります。

 第一は、米軍を、先制攻撃をたたかうために、世界のどこにでも迅速に展開できる、より機動的な軍隊につくりかえ、再配備するということです。

 ファイス国防次官(当時)の報告では、「われわれの前方配備態勢の基礎となる前提は、根本的に変化した。われわれはもはや、米軍が定位置でたたかうことを想定していない。むしろ米軍の目的は、それらが駐留する場所から遠く離れているかもしれない戦域に戦力を投射することである」とのべています。

 アフガン、イラク戦争のような先制攻撃の戦争をたたかうために、「駐留する場所から遠く離れているかもしれない戦域に戦力を投射する」――地球規模での“殴り込み”の軍隊としての機能を、抜本的に強化する。これが第一の柱であります。

 第二は、この戦争をともにたたかうために、米国と同盟国との本格的な軍事的協力関係をつくりあげるということです。ファイス報告では、「われわれは、同盟諸国にたいし、(海外へ)展開可能で、本当に使い物になる司令部および部隊を確立するよう促している」とのべています。同盟国の軍隊を、「展開可能」――本格的な海外派兵ができる軍隊にする、そのために「本当に使い物になる」軍隊につくりかえるというのです。

 今年、二月三日に米国防総省が発表した「四年ごとの国防政策見直し報告」(QDR)でも、「危機がはじまってからの事後対応から、予防的行動へ」と先制攻撃戦略を強調するとともに、米軍が同盟国の軍隊とともに「固定的な防衛・駐留軍から、機動的・遠征的作戦へ」という表現で、“殴り込み”戦争をたたかえる態勢をきずくことを強調しています。

 日本では、「米軍再編」のこの二つの柱が、世界で最も危険な形で具体化され、在日米軍基地強化と日米軍事一体化がすすめられようとしています。

 今日は、在日米軍の“殴り込み”態勢の強化、基地の恒久化という問題に焦点をあてて報告します。

 もともと在日米軍は、海兵隊、空母打撃群など、海外への遠征専門の“殴り込み”部隊が主力という、世界に類のない異常な構成を特徴としています。「米軍再編」では、在日米陸海空・海兵四軍そろって、この“殴り込み”態勢が飛躍的に強化され、恒久化がはかられようとしています。

本土での基地強化計画

“殴り込み”機能の強化・基地永久化が共通した特徴

 まず、昨年二月と十月の「2プラス2」(日米安全保障協議委員会)で合意された「米軍再編」計画にかかわって、本土で重大な焦点となっているいくつかの基地について、報告したいと思います。

 神奈川県のキャンプ座間…米陸軍第一軍団司令部を改変した新司令部(UEX)を、米国本土から移転する計画がすすめられています。この新司令部は、「ストライカー旅団」と呼ばれる米陸軍の“殴り込み”部隊の指揮をより本格的におこなうというものです。同時に、「2プラス2」の合意では「展開可能で統合任務が可能な作戦司令部」とのべています。司令部そのものが、世界のあらゆるところに「展開」し、陸軍だけでなく、必要があれば、陸海空・海兵四軍を「統合」して指揮をおこなうというのです。さらにキャンプ座間には陸上自衛隊の「中央即応集団」――海外派兵部隊の司令部もおかれます。陸上自衛隊もひきつれて、海外での紛争に介入する。文字どおり座間を“殴り込み”戦争の司令塔にしようという恐るべき計画であります。

 この計画が基地の永久化に道を開くことに、地元の強い怒りが集中しています。防衛庁長官は、「これは百年の計画」とのべました。「戦前の陸軍士官学校いらい、七十年も軍事基地となっていたのに、これから先、『百年の計画』とは何ごとか」。これが党派をこえた地元の共通の怒りの声であります。

 神奈川県の横須賀基地…原子力空母ワシントンの配備が計画されています。ここでは何よりも原子力事故と放射能汚染への不安が広がっています。ワシントンの原子炉の発電量は美浜原発1号炉に匹敵します。一年の半分は横須賀に停泊する。三千万人がすむ首都圏に原発が設置されるにひとしい事態です。

 同時に、“殴りこみ”能力が格段にパワーアップします。これまでの通常型空母キティホークは四日ごとに燃料補給が必要でした。ところが原子力空母はいったん原子燃料を積んだら二十五年間は航行を続けられる。さらに重い油を積む必要がなくなるため、一・五倍の航空燃料、一・八倍の武器・弾薬が積める。在日米海軍司令官は、「二倍の期間、戦闘作戦を遂行できる」といっています。就役したての最新鋭空母の母港化を許せば、まさに母港が永久化されることになります。

 山口県の岩国基地…住民をたえがたい爆音で苦しめつづけてきた厚木基地の空母艦載機部隊を、岩国基地に移転する計画がすすめられています。今回の移転では空母艦載機五十七機が移駐する計画です。すでに配備されている三十六機のFA18ホーネット、その他の米軍機と自衛隊機をあわせると百三十機をこえることになります。「想像を絶する爆音が予想される」。地元で強い不安と怒りが広がっています。市民生活が一変する恐るべき事態がひきおこされることになります。

 重大なことは、日米合意は、今回の移転を、「厚木周辺住民の負担軽減」と位置づけてはいないということです。「2プラス2」の合意文書には、その目的を、「米空母および艦載機の長期にわたる前方展開の能力を確保するため」とのべています。「長期」にわたって空母の母港を押し付ける、そのためにはより安定的に使える基地に艦載機を移す必要がある。ここでも目的は、“殴り込み”機能の強化と、基地の永久化にあるのです。

 本土の基地強化は、これらを焦点としつつ、横田、千歳、百里、小松、築城、新田原、鹿屋など、まさに北海道から、九州にまでおよびます。その全体が、イラク戦争のような無法な“殴り込み”戦争をたたかう機能の飛躍的強化と、基地の固定化・永久化を共通の特徴とする、許しがたいものであります。

沖縄の新基地建設計画

三つの大問題を告発する

 沖縄の新基地建設も、同じ流れのなかで、たくらまれているものです。

 「2プラス2」の合意では、「キャンプ・シュワブの海岸線の区域とこれに近接する大浦湾の水域を結ぶL字型に普天間代替施設を設置する」とのべられています。

 これまで沖縄では、九六年にかわされたSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意にもとづいて海上基地をつくる計画が問題になってきました。SACO合意にもとづく海上基地案と、「2プラス2」合意にもとづく沿岸基地案は、重大な質的変化があります。

 まず新基地建設の考え方について、二つの文書はどう書いているか。

 SACO合意では、「両国政府は、沖縄県民の負担を軽減し、それにより日米同盟関係を強化するために、SACOのプロセスに着手した」とのべていました。この路線は、県内での米軍基地のたらいまわしを押し付け、老朽化した普天間基地にかえて最新鋭の海上基地を手に入れるという、基地機能強化に本質がありました。しかし、ともかくも「負担の軽減」を目的とすることを建前にかかげていました。米兵による無法な蛮行への県民的怒りがわきおこり、それにたいして建前だけでも「負担の軽減」を掲げざるをえなかったのです。

 ところが、「2プラス2」合意には、どう書かれているか。沖縄の新基地建設は、「柔軟な危機対応のための地域における米海兵隊の再編」という項目のなかに位置づけられており、そこではつぎのようなことが明記されています。

 「世界的な態勢見直しの取組の一環として、米国は、太平洋における兵力構成を強化するためのいくつかの変更をおこなっている。これらの変更には、海兵隊の緊急事態への対応能力の強化や、それらの能力のハワイ、グアムおよび沖縄の間での再分配が含まれる」。

 「海兵隊の強化」を公然と正面から目的にかかげ、その中軸的な基地として沿岸基地案が位置づけられているのです。

 「負担の軽減」を目的とすることを建前に掲げた計画から、「海兵隊の強化」を公然と目的に掲げた計画に変わった――ここがきわめて重大です。

 米軍再編協議を担当する米国防総省のジョン・ヒル日本部長は、「米軍再編は沖縄に特化したSACOとは異なる。米国の世界戦略によって決定されるものだ」とのべていますが、これはことの真相を当事者が語ったものにほかなりません。

 「海兵隊の強化」先にありき――この立場からの計画は、県民にとって、いっそう重大で深刻な危険をもたらします。それは、海上基地案と沿岸基地案を具体的に比べてみるとよくわかります。私は、三つの大問題を告発したい。

(1)「撤去可能」から「恒久基地」になる

 SACO合意では、海上基地について「撤去可能なもの」とされていました。稲嶺知事は公約で「十五年期限」とのべていました。ともかく建前としては恒久基地でなく、「撤去可能」な暫定基地ということがいわれていました。ところが、沿岸基地案は、この建前はまったく消失しました。これは文字どおりの恒久的な基地の建設となります。

(2) 海兵隊の“殴り込み”機能が格段に強化する

 海上基地案にくらべても、沿岸基地案は、海兵隊の“殴り込み”機能がいっそう強化されることになります。

 ――滑走路は、海上基地案の千五百メートルから、千八百メートルに大幅延長されます。これは海兵隊の次期主力機MV22オスプレイ(従来のCH46型ヘリにくらべて航続距離は五倍、速度は二倍、積載量は三倍)の配備を念頭においたものです。さらにKC130空中給油機や輸送機も離発着が可能になります。

 ――桟橋つきの飛行場となります。「2プラス2」合意文書には「燃料補給用の桟橋」をつくると明記しています。現在示されている図面でも、大浦湾側に最大六百メートルの巨大な「桟橋」をつくることができます。今日、現地を調査してきましたが、「桟橋」がつくられる海の水深は四十メートルから五十メートルに達し、強襲揚陸艦エセックスなど大型船も入れる深さです。米海兵隊の「空の玄関」と「海の玄関」が一体化され、機能の格段の強化がはかられる危険があります。

 ――海上基地にくらべても、海兵隊にとっていっそう使いやすい基地となります。海上基地計画は、米国防総省のつくった運用構想をみると、海兵隊航空部隊の四十一施設のうち、海上基地におかれるのは二十七施設、司令部や宿舎など十四施設は沿岸部に分離しておかねばならないというものでした。沿岸基地案では、必要なあらゆる施設は、同じ基地のなかに一体化され、基地はいっそう使いやすいものになります。

 こうして、沿岸基地案が強行されれば、キャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンの主力の戦闘部隊と陸海空で一体となった訓練、作戦運用が可能になり、海兵隊の侵攻能力は飛躍的に向上することになります。イラク戦争で暴虐のかぎりをつくした海兵隊の根拠地とされていることに、沖縄県民のみなさんは強い怒りをもっておられると思います。これを野放図に拡大する案など、絶対に許せる話ではありません。

(3) 住民の安全、自然環境は、まったく考慮の外におかれている

 この計画では、「海兵隊の強化」最優先で、住民の安全、自然環境の保全は、まったく考慮の外におかれています。

 ――固定翼機の進入経路は、辺野古の住宅地中心地からわずか七百メートル。海上基地案で滑走路と住宅地中心地とが二・二キロだったのと比べても、爆音と事故の危険が飛躍的に拡大することになります。

 ――環境汚染もいっそう重大化します。サンゴ礁や魚介類などの生態系、ジュゴンの生息、マングローブ林などに重大な影響をもたらします。しかも被害は、辺野古沿岸だけでなく大浦湾に拡大します。世界自然保護基金(WWF)ジャパンの花輪伸一自然保護室主任も「辺野古海域、大浦湾ともに生物多様性が高く、現行計画と同等かそれ以上に環境への悪影響が心配される」と、自然破壊の重大性を強く警告しています。

 「2プラス2」合意文書では、第三海兵遠征軍の司令部をグアムにうつすといいますが、これは実質的な負担軽減にはまったくなりません。犯罪と事故をくりかえしてきた海兵隊の実戦部隊の本体はその司令部とともにまるまる沖縄に残ります。

 米大使館のメア安保部長は、「実戦部隊の海兵遠征旅団は変わらないのだから、抑止力には変化はない。もともと第三海兵遠征軍司令部は、沖縄にいる実戦部隊と米本土などから派遣される部隊を組み合わせて海外に展開させる指揮をとるのであり、沖縄にいてもグアムにいてもそんなに変わらない。また必要があればいつでも沖縄に戻れる」とのべています。

 しかも一兆円ともいわれるこの移転費用を、日本国民に負担させる計画がすすめられています。歴史的にも、国際的にも類のない許しがたいことです。

 沖縄県民のたたかいで、海上基地計画は破たんに追い込みました。その代わりに出してきた沿岸基地案は、海上基地にくらべてもいっそうひどい代物です。しかし、これによって県民との矛盾はいよいよ決定的になりました。この暴挙を食い止めるために力をつくそうではありませんか。

自治体ぐるみのたたかいの発展こそ、このたたかいに勝利するカギ

 このたたかいで勝利への道をどう開くか。最大のカギは、政治的立場の違いをこえ、自治体ぐるみのたたかいを揺るがず発展させることにあります。

 すでに全国の百三の自治体で、首長もしくは議会によって基地強化反対の意思が表明されています。その怒りは、異常な基地強化の中身とともに、それを自治体に無理やり押し付けてくる政府の姿勢にも集中しています。

 首相は、「自治体と相談し、自治体がOKしたら、米側と交渉する」と言明しています。ところが、何の話し合いもない、情報すらない、一方的に日米合意だといって押し付けてくる。この姿勢への怒りが激しい。

 それへの怒りが自治体で広がると、自治体に「圧力」をかける。防衛施設庁の本庁から、出先の担当者にむけて、「反対の意見書を議決しそうな動きがあるか否かについて常にウォッチしていただき」「可能な範囲でそのような議決をしないよう関係者の理解を求める動きをしてほしい」とのメールが送られていました。防衛庁は、この「圧力メール」の存在をしぶしぶ認めましたが、だれが読んでも圧力としか読み取れないものを、「圧力ではない」と居直りつづけている。これも怒りを広げています。防衛施設庁のこの動きは、自治体ぐるみの動きをどんなに恐れているかを示すものです。

 基地押し付けの先兵をはたしている防衛施設庁の談合問題が、彼らの矛盾をいっそう深刻にしています。明らかになったのは氷山の一角であり、全国で談合の疑惑があります。日本の「防衛」でなく、天下りと癒着の構造の「防衛」が仕事の役所に、およそ平和や安全を語る資格などありません。防衛庁長官が防衛施設庁の解体を明言したことから、自治体からは「なくなる組織の担当者と話しても意味がない」という声もあがっていますが、もっともな声であります。

 岩国での住民投票できっぱりと市民の反対の意思表示をすることは、当面するきわめて大切なたたかいです。この大きな成功を心から期待するものです。

 沖縄でも、「沿岸案反対」の一点で、革新勢力はもとより、県知事、名護市長もふくめ島ぐるみのたたかいを発展させる条件があります。これまでSACO路線に反対してきた人も、賛成してきた人も、「沿岸案反対」の一点で県民的共同をつくりあげていくことが、勝利のカギであります。

 基地強化反対の一点で自治体ぐるみのたたかいを揺るがず発展させましょう。全国各地でたたかいを発展させながら、相互のたたかいの連帯を強め、本土と沖縄のたたかいの連帯を強めましょう。


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