2006年2月23日(木)「しんぶん赤旗」
主張
月例経済報告
庶民が報われない「回復」
小泉内閣が月例経済報告で景気判断を引き上げ、回復の本格化を強調しています。
日銀の「生活意識に関するアンケート調査」の結果を見ると、一年前と比べて景気が悪くなった、変わらない、と答えた人が八割以上を占めています。国民の圧倒的多数は回復を実感できていません。
理由ははっきりしています。多くの国民のくらしや仕事が良くなっていないからです。
吸い上げられた所得
月例報告は「企業部門の好調さが家計部門へ波及」しているとのべています。それが本当なら、国民の大多数が回復を実感できないはずがありません。
消費支出が昨年、再び減少に転じるなど、家計の低迷は政府の統計にも表れています。月例報告でも雇用には「厳しさが残る」としています。国民のくらしにかかわる指標が低調な一方で、企業の収益と設備投資が大幅増加を続けるなど、企業部門は絶好調です。
収益増加の八割が大企業に集中しています。資本金一億円以上の企業収益は、直近の経常利益の底をつけた二〇〇一年度と比べて〇四年度には十三・二兆円増えました。小泉内閣の発足後、働く人の所得(雇用者報酬)は、昨年までに十二・三兆円のマイナスとなっています。
大企業はリストラで失業を増やし、正社員から不安定・低賃金の非正社員への転換を進めることによって、働く人の所得をみずからの利益に付け替えてきました。
企業部門の好調さが家計部門に波及しているという政府の説明は、完全に因果が逆立ちしています。
家計から企業への所得移転は小泉内閣の発足以降、明確に加速しました。財界の求めに応じて派遣労働者や契約社員にかかわる規制を緩和し、働くものの権利をいっそう弱めて、経営側の立場を強める小泉「構造改革」の結果です。
「努力した者が報われる社会」―。これが小泉内閣が国民に語った「構造改革」のスローガンです。
「努力した者」の象徴として小泉首相、竹中総務相、武部自民党幹事長らが称賛してきた人物こそ、ライブドア事件の堀江貴文被告です。
小泉「構造改革」の価値観が「努力」と認めるのは、くらしと雇用を守るルールが貧弱な、株式市場で一般投資家を守る規制が弱い日本で、モラルにこだわらず、陰ではルールさえ踏み破ってひたすら自己利益を追求することにほかなりません。
働く人の所得が大幅に減っているのに、役員賞与や株式配当金が〇一年度から〇四年度にかけて四・八兆円も増えました。小泉内閣は大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を温存・拡大するとともに、庶民には五回の予算編成で十三兆円に上る増税・負担増を押し付けてきました。
これが小泉「構造改革」の成果であり、このような「改革」の必然の帰結として貧富の格差の拡大が起こっています。
貧困と格差に歯止めを
貧困と格差が拡大している事実を示され、世論調査で大多数の国民が格差の拡大は良くないと答えているのに、小泉首相は「格差は悪くない」と平然としています。
こんな政治を続けるかぎり、額に汗する庶民が報われる社会はますます遠ざかります。日本共産党が来年度予算の抜本組み替え要求でのべているように、貧困と格差の拡大に歯止めをかける経済運営に抜本転換することが必要です。