2006年2月21日(火)「しんぶん赤旗」

主張

イラクの自衛隊

陸自も空自も即時全面撤退を


 イラクのサマワに駐留する陸上自衛隊は三月にも撤退を開始、クウェートを拠点に輸送活動を行っている航空自衛隊は残留―こんな報道が飛び交っています。政府も、陸自については「イギリス軍やオーストラリア軍の撤退状況や治安状況をみて対応する」といいながらも、英国政府などとの協議を認めています。

 しかし、まもなく三年となるイラク戦争は、もともとアメリカが、大量破壊兵器を持っているとウソをついて始めた国連憲章違反の戦争です。自衛隊が多国籍軍としてイラクに駐留し米軍をささえること自体が違法不当であり、許されないことです。

米軍作戦支援の拡大

 アメリカの研究機関「ワールド・パブリック・オピニオン」は今年一月、イラクで千五百人のイラク人を対象に占領軍にかんする世論調査を実施しました。その結果は、70%が米軍撤退を要求、多国籍軍駐留反対は82%でした。占領軍が治安改善に役立つというのは1%もありません。米軍が、罪のない民間人を十二万人以上殺害(イラク人道組織「イラキュン」)し、軍事支配を続けていることへの怒りを示すものです。

 サマワだけは別格だとする日本政府の言い分も通用しなくなっています。自衛隊宿営地に何度も砲弾が撃ち込まれるだけでなく、通行中の陸自の車列が道路爆弾で攻撃を受けるまでになっています。自衛隊を送り込むための現地工作で、サマワ市民に過大な期待をもたせたことが裏目に出て、自衛隊は生活改善に「役立っていない」という不満の声も増大しています。イスラム教シーア派サドル師派デモが、「ノーノージャパン」と叫び投石する事件も起きました。サマワでも多国籍軍への反発が強まっていることを示すものです。陸自の駐留がサマワ市民の気持ちを逆なでするものとなっていることはあきらかです。

 空自残留は重大です。空自の活動は、米軍の軍事作戦を直接支援する「安全確保支援活動」(イラク特措法)です。人道復興支援のようにいうのは間違いです。

 二〇〇四年三月から現在まで、輸送は二百六十八回。〇四年三月だけで、多国籍軍千二百人をクウェートからイラクに輸送(今津官房副長官=当時)しました。津曲航空幕僚長(当時)は、米兵などとともに携行武器も輸送したとのべています。

 C130輸送機を送っているのは、米、英、豪、日の四カ国だけです。日本が空輸の相当部分を負担しているとみられます。アメリカは、空自の役割を強化・拡大し、輸送分野で中心的な役割を果たさせようとしています。

 昨年十月の日米英豪協議でも、空自の駐留継続を条件に陸自の撤退を容認する姿勢を打ち出した経過があります。

 日本政府は、アメリカのいいなりに、危険を避けるため事実上イラク南部に限っている輸送をイラク全土に広げるつもりです。小泉首相は、「どの地域でやるかどうかは、独自に判断していきたい」(昨年十二月八日)とのべています。こんなことを許すわけにはいきません。

国連秩序を守れ

 イラク戦争は大義もなければ道理もありません。多国籍軍参加国が激減するのは当然です。日本をイラク戦争の泥沼に沈めるようなことをすべきではありません。

 国連憲章違反のアメリカのイラク戦争からただちに手を引き、憲法の平和原則にもとづいて、ODA(政府開発援助)など平和的方法でイラク復興に尽力すべきです。


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