2006年1月29日(日)「しんぶん赤旗」

主張

政府税調

庶民増税ありきに道理なし


 政府税制調査会(首相の諮問機関)が二十七日総会を開き、今後の税制「改革」方針を示す「中期答申」のとりまとめに向けた議論を開始しました。

 政府税調は三年に一度のペースで中期答申を作成しています。消費税導入や税率引き上げ、それに並行して実施された法人減税、所得税の最高税率引き下げなど税制改悪のレールを敷く役割を果たしてきました。

 石弘光・政府税調会長は総会後の記者会見で、消費税率を二ケタに引き上げる方針を前提に議論を進めることを強調しました。

■庶民への全面増税

 消費税増税とともに、所得税の諸控除の縮小・廃止による「サラリーマン増税」も大きな焦点です。石会長は自営業者の課税強化も検討項目に挙げています。

 所得が低くなるほど負担が重い逆進性を持ち、社会的に弱い立場に置かれた人に厳しい消費税の増税。サラリーマン狙い撃ちの増税に加えて自営業者へも課税を強化する―。政府税調がつくろうとしているのは、庶民への全面的な大増税計画です。

 弱肉強食を野放しにする「構造改革」によって、貧困と所得格差が重い社会問題になっています。

 派遣やパートなど非正規雇用は働く人の三人に一人、女性や若者の二人に一人に達しています。労働者派遣業の派遣者数は二百二十七万人、対象業務を原則自由化した一九九九年の二・六倍に膨らみました。不安定な立場と低い賃金に抑え込まれた非正規雇用が、雪崩を打つように広がっています。

 自殺率は世界最悪の水準です。

 十年前と比較すると日本の自殺率は一・五倍に急増しました。一定の経済力を持った国の中には、ほかにこんな国は存在しません。

 小泉首相がいくら「格差拡大は誤解だ」と言葉で否定しても、くらしと雇用の現実は目の前にあります。

 消費税をはじめとする庶民大増税は、こうした日本社会の悲惨なゆがみをますます深刻にします。

 政府税調も消費税が逆進性の問題を抱えていることを認めています。

 これまで政府税調は消費税の逆進性は累進的な所得税でカバーすると言ってきました。しかし、石会長は「低所得者ほど負担が増す逆進性は、生活保護など歳出面で緩和すべきだ」と断言しています(「毎日」二十七日付)。

 弱肉強食を是とする小泉「構造改革」の下で、会長が税制の所得再分配機能を投げ捨てるような発言をするほど、政府税調のモラルハザード(倫理崩壊)が進んでいます。

 小泉内閣は歳出削減の標的の一つとして、福祉の削減、生活保護の受給を減らすことに一生懸命です。低所得者を、税制と歳出の両方から痛めつける血も涙もないやり方です。

■「法人税は減税」とは

 石会長は「財政赤字にこれほど危機感のない国民はない」と言う一方で、法人税は「税率を下げる議論になるだろう」としています。

 財政破たんの原因をつくったのは、アメリカと財界の要求に従って無駄な公共事業を大盤振る舞いし、大企業・大資産家に気前よく減税を献上してきた自民党政治です。国民には、財政赤字で脅迫されるいわれはまったくありません。

 財政赤字を持ち出すなら法人税率の引き下げなど論外です。無駄遣いと大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を改めない限り、財政を国民本位に立て直すことはできません。

 まず「庶民増税ありき」の姿勢を根本から正すべきです。


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