2006年1月26日(木)「しんぶん赤旗」

良心的兵役拒否とは?


 〈問い〉 雑誌『経済』昨年10月号の「小田実、上田耕一郎対談」のなかに「良心的兵役拒否」という言葉がでてきました。8日付本紙によると、韓国でもこの制度導入が検討されているとのことですが、そもそも「良心的兵役拒否」とはどんな意味ですか?(愛知・一読者)

 〈答え〉 良心的兵役拒否とは、キリスト教の「汝(なんじ)殺すなかれ」、仏教の「不殺生」など、信仰や信念にもとづき、兵役をこばむ行為を指します。

 アメリカでは古くからクエーカー教徒のように信仰上の理由によると確認された者は兵役の代わりに重労働をすることが認められていました。しかし、大半は反逆者として重罪とされました。日本でも、日露戦争時のセブンスデーアドベンティスト教会・矢部喜好や、15年戦争時の灯台社(ものみの塔)・明石順三ら、少数ですが宗教上の理由で兵役を拒否した人たちがいました。

 20世紀の二つの世界大戦を経るなかで、良心的兵役拒否は、基本的人権である「良心の自由」の一部として、信仰だけでなく信念に基づくものでもしだいに認められるようになっていきます。

 佐々木陽子著『兵役拒否』(青弓社ライブラリー)によると、いまではヨーロッパの17カ国で、兵役拒否を認めています。兵役拒否を人権として認めている代表的な国家はドイツです。ナチズムの克服が戦後の課題となったドイツでは「二度と戦争を起こしてはならない」という決意にたって、徴兵制導入以前の1949年、基本法(憲法)に「良心的兵役拒否権」を基本権として明記。84年からはそれまであった口頭試問をなくし書類審査だけとし、良心的兵役拒否が認められると、13カ月の社会奉仕(福祉や環境・自然保護)を義務付けています。ドイツの兵役拒否者は90年代に急増し兵役適格の若者の3分の1を占め、03年には50パーセント以上を占めるまでに広がっています。

 兵役拒否の若者は「『軍事的奉仕活動』では世界は変わらない。『市民的奉仕活動』の『平和主義』の実践が社会をよくし、世界を変える」といっています。作家の小田実さんは、この言葉を引きながら「私は日本の国のあり方を『良心的兵役拒否』の延長線上において、『平和主義』の実践を行う『良心的軍事拒否国家』であるべきだと主張する」といっています。憲法9条を持つ日本は災害救援など平和的な国際的な協力はどんどんするが軍事協力はしないという国家になろうという提案で、私たちも同感です。(喜)

 〔2006・1・26(木)〕


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