2006年1月23日(月)「しんぶん赤旗」

靖国参拝

「心の問題」「一部の問題」か

政治の問題にしたのは誰


 小泉純一郎首相は二十日の施政方針演説で、自らの靖国神社参拝をめぐって中国、韓国との関係がゆきづまっていることについて、「一部の問題で意見の相違や対立」とあらためて開き直りました。四日の年頭記者会見では、自らの靖国参拝を「一政治家の心の問題」と言い切りました。しかし、問題の本質は「心の問題」でも「一部の問題」でもありません。


 靖国問題の核心は、過去の日本の侵略戦争を、「自存自衛の戦争」「アジア解放の戦争」として正当化する歴史観、戦争観に立つ靖国神社に、政府が公認のお墨付きを与えるような行動をとることが、戦後の世界で許されるのか、ということです。小泉首相が「心の問題」というのは、とんだすりかえです。

 そもそも「心の問題」論をうんぬんしなければならないほど、靖国問題を政治の場に持ち込んだのは小泉首相自身です。二〇〇一年の自民党総裁選で、小泉首相は八月十五日に靖国神社に参拝すると公約。日本遺族会の票を狙ったものといわれました。総裁の座を争った高村正彦元外相も、CS番組で、「心の問題を政治の問題にしたのは小泉首相」と指摘し、橋本龍太郎氏らと争った小泉首相が、靖国参拝の姿勢を明確にして、票が流れたとのべています。

 自民党総裁選での票ほしさに靖国神社参拝を政治の問題にしながら、いまさら「心の問題」といってみても、どんな説得力があるでしょうか。

 靖国問題を「一部の問題」と表現することで、自らの靖国参拝でつくりだした中国、韓国との関係悪化の責任を不問にし、まるで責任は中国、韓国の側にあるかのような横柄な言い方をしていることも重大です。

 靖国問題は、あれこれの部分的な一つの問題ではなく、戦後の国際秩序の土台にかかわる重大問題です。東アジアの国々が参拝の中止を求め、米国の政府や議会からも、批判や懸念の声があがっているのはそのためです。小泉首相の発言には、この認識と自覚がまったく欠けています。

 小泉首相の後継総裁に意欲を示す麻生太郎外相も二十日、外交演説のなかで、中国に対し、「過去の問題にこだわりすぎることなく」と歴史問題を水に流せといわんばかりの発言をしました。

 参拝の既成事実を積み重ねたら、いつのまにか問題が「解決」するといわんばかりの小泉首相の態度は、日本外交をますます行き場のない袋小路に追いやるだけです。

(小林俊哉)


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