2006年1月19日(木)「しんぶん赤旗」

主張

南米の選挙

自立、民主、地域協力への民意


 南米ボリビアでは、昨年末の大統領選で当選を決めたモラレス氏が今月就任し、「新自由主義」からの転換、ガスなど天然資源の国有化、貧困問題の解決などの政策を掲げて新たな一歩を踏み出します。南米諸国は、米国主導の国際通貨基金(IMF)路線のもと、極端な民営化を強要され、失業と貧困層の増大、貧富の差の拡大が激しくなるなど「失われた十年」(一九八〇年代)、「絶望の十年」(九〇年代)といわれる苦難の時代を経てきました。しかし、九〇年代末から各国で、こうした状況からの脱出、転換をめざす新しい政権の誕生が相次いできました。

■新しい波の特徴

 ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイとボリビアの新政権は、自主的な国民本位の政策運営で南米大陸の様相を変えつつあります。さらに今年は、ペルー、コロンビア、エクアドル、ブラジル、ベネズエラの大統領選があります。新しい流れはどこまで伸張するでしょうか。

 南米諸国の大半は、十九世紀前半に独立しました。しかし、欧州列強と対抗しつつこの地域を「裏庭」とみなす米国の支配、干渉のもとに長く置かれた辛酸の歴史を共有しています。とりわけ最近数十年は、米国などが主導する「新自由主義」の“実験場”とされ、多くの国民が貧困と格差に苦しめられてきました。

 いまおきている新しい波の特徴は、こうした歴史から脱却する民主的な変革を、選挙を通じ、広範な大衆運動にも示される民意を基本に、地域協力を強めて、前進させていることです。そうすることで各国は、自主的な経済運営の幅を広げ、米国の経済的な圧力や政治的な干渉、さらには繰り返されてきた武力侵攻や反動的な軍事クーデターの押し付けを許さない力を強めています。

 この変化を支えているのが、民主主義のためのたたかいです。大枠で「新自由主義」政策をとるチリでも、選挙で成立した革新政権を米国の後押しを受けて暴力的に倒した不法な軍事クーデター(一九七三年)の首謀者、ピノチェト将軍らにたいする追及が粘り強くとりくまれています。アルゼンチンなどでも、かつての軍事独裁政権の国民弾圧を告発、追及する運動が続いています。

 米国はいまでも、中南米地域の最大の貿易相手国であり、各国軍部に影響力をもち、干渉の足場をもっています。しかし、米国によるイラク侵略戦争に南米諸国が一致して反対し、昨年は、米州機構(OAS、三十五カ国)の事務総長選で米国推薦の候補が敗れています。米国流の「民主主義」を基準に各国を「監視」しふるいわけて「援助」を決めるとした提案は、圧倒的な反対で否決されました。

 一昨年十二月には、南米全十二カ国が首脳会議で、主権平等、紛争の平和的解決、民主的経済秩序をめざし、地域内の自主的な協力関係を強化する南米諸国共同体の設立を宣言しています。この地域の「独立、平和、社会進歩の波は、二一世紀の世界の前途にかかわる大きな意義をもつもの」(日本共産党第二十四回大会での志位委員長の中央委員会報告)です。

■変化の意義とらえて

 日本と南米諸国は地理的には遠いものの、経済的、人的つながりは以前に増して深まりつつあります。日本に求められるのは、自主、平和、社会進歩をめざす南米地域の変化が世界の平和と共存にとってもつ重要な意義を正面からとらえ、新たな協力関係を築いていく自主外交です。


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