2006年1月14日(土)「しんぶん赤旗」

主張

超金融緩和

所得吸い上げ政策に終止符を


 日銀が、銀行に資金をじゃぶじゃぶに供給する「金融の量的緩和」をやめる見通しを示していることに対して、閣僚や与党がしきりに横やりを入れています。

 竹中総務相は同省職員への年頭あいさつで「マネーが不足しデフレが続いている」とのべ、日銀をけん制。総務省の仕事とは遠く離れた金融政策にわざわざ言及する熱の入れようです。自民党の中川秀直政調会長は昨年十一月、「政策目標について日銀に独自性はない。それが分からないなら日銀法を改正する」と脅迫まがいの発言をしています。竹中総務相は「中川政調会長のご意見は非常に適切」と応じました。

■大きな副作用だけが

 副作用だけが目立つ「量的緩和」をやめるのは当然です。

 日銀から民間銀行に貸し出す際の基準金利である公定歩合は十五年間にわたる連続的な引き下げで、現在はわずか0・1%の「超低金利」となっています。

 日銀は公定歩合の引き下げとあわせて、債券買い取りなどで銀行への資金供給を増やして短期金利を0%近くに誘導する「ゼロ金利政策」を採用。さらに五年前からは誘導目標を金利から資金量に切り替え、「ゼロ金利」の維持に必要な資金量を上回る資金を銀行にばらまく「量的緩和」を実施しています。

 銀行にばらまく資金量は、当初の五兆円から三十―三十五兆円に膨れ上がっています。

 金利引き下げは企業がお金を借りやすくし、「量的緩和」は銀行の遊休資金を増やせば銀行が貸し出しを増やすだろうという政策です。日銀は「量的緩和」が金融と経済の安定に大きな効果を発揮したとしていますが、実態はまったく違います。

 「量的緩和」は生産的な経済活動には何ら役立っていません。八十三兆円もの資金余剰を抱える大企業は銀行からお金を借りたがらないし、銀行は貸し渋りと貸出金利の引き上げによって中小企業に資金逼迫(ひっぱく)をもたらしています。

 あふれる資金は、最近の株式市場や都市再開発の過熱、目先の利益を狙った企業買収などマネーゲームのはんらんを引き起こしています。

 預金利息は無いに等しい状態です。超低金利になったことで、家計は十一年間の合計で二百十八兆円の利子所得を失ったのに対して、利払いの減少で企業は百四十兆円、政府は百二十五兆円の恩恵を受けたとする試算もあります(中前国際経済研究所)。

 家計は年平均約二十兆円、1%分が二・四兆円に当たる消費税率にして8%分の所得を毎年吸い上げられ、企業と政府に巨額の収入を配分してきたことになります。

 竹中大臣らが「量的緩和」の解除に横やりを入れているのは、こうした国と企業の「既得権益」に固執しているからにほかなりません。大企業には法人減税を継続し、庶民には増税と社会保障の負担増を押し付ける小泉「構造改革」の一環です。

■経済の安定のためにも

 日銀は「量的緩和」の解除後もゼロ金利を維持し、次第に正常な金利に戻していく道筋を示しています。解除を口実に銀行が住宅ローン金利を一気に引き上げることがないよう監視する必要があります。

 金融緩和と公的資金の恩恵を受け、空前の利益を上げている大銀行には、住宅ローン金利を抑える責任も余力も十分にあるはずです。

 日本経済の自律的な安定のためにも、家計から資金を吸い上げる政策を改めることは重要です。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp