2006年1月11日(水)「しんぶん赤旗」

主張

高速輸送艦の導入

米軍のための海外派兵用装備


 政府は、日米同盟再編にかんする「中間報告」(昨年十月二十九日)で約束した高速輸送艦の導入に向けて、検討をはじめています。

 高速輸送艦は、米軍が先制攻撃戦争政策のため特別に重視し、導入を始めた新鋭装備です。日本では、過去に、検討の対象にしたこともありません。“米軍の足”となるために、こんなものを導入しようとするところに、小泉政権の度し難い対米追随姿勢があらわれています。

■武力行使と一体化も

 高速輸送艦は、時速八十キロ以上の速度で、兵員一千人以上、ヘリ八機、物資四百トン以上を一度に輸送できます。沖縄から韓国までならその日のうちに、グアムまでなら強襲揚陸艦で四日かかるところを二日で輸送できます。

 沖縄の米海兵隊は、オーストラリアの民間会社から高速輸送船「ウエストパック」を借り上げ、沖縄からアジア各地に訓練などで出動するさい使っています。海兵隊は、将来、三隻に増やしアジア地域に配備する計画(グレグソン米太平洋海兵隊司令官)です。高速輸送艦を活用することで、海兵隊は、対テロ戦争をはじめ地球的規模の紛争への介入能力をさらに強めることになります。

 ブッシュ政権は、米軍再編方針で、輸送手段の「新鋭化が必要」(二〇〇四年八月 ホワイトハウス公表文書)とのべています。高速輸送艦を、先制攻撃戦争に必要不可欠な装備と位置づけているのです。

 そのため、「中間報告」でも、日本の米軍にたいする「輸送協力」として、「航空輸送」とともに「高速輸送艦の能力によるものを含めた海上輸送を拡大」すると明記しています。自衛隊に高速輸送艦を持たせ、アメリカの先制攻撃戦争態勢に組み入れ、足として使うということです。

 高速輸送艦導入が、「日本防衛」のためでなく、米軍のためであることは明らかです。自衛隊が、「専守防衛」の建前を守る限り、海外派兵のための高速輸送艦は必要のない装備です。政府が〇四年十二月に決定した「中期防衛力整備計画」にもまったく含まれていませんでした。これを百八十度転換しての高速輸送艦導入は、有害無益です。

 防衛庁の自前調達か、小笠原航路(東京―父島)就航計画が中止となった高速旅客船テクノスーパーライナーを使うのか固まっていないといわれますが、いずれにしても、自衛隊は、米軍戦闘部隊を紛争地に迅速輸送する役割を負うことになります。

 先制攻撃戦争のさいの輸送作戦は、米軍の武力行使と一体化することはさけられません。これは、戦争の方向にかじをとるものであり、「武力行使との一体化は憲法違反」との政府見解にてらしても、絶対に許されません。

 高速輸送艦導入が、自衛隊の海外派兵を常態化するための恒久立法化を加速させる危険もあります。経費も莫大(ばくだい)なものです。

■世界で異常な逆流

 小泉政権は、日米軍事一体化を強めればアジアや国際社会でうまくいくかのような態度ですが、世界ではいま、憲法九条を、国際社会の平和秩序をつくっていくうえでの指針として評価する声が高まっています。紛争を、平和的話し合いで解決する流れも大きくなっています。小泉政権の日米軍事同盟強化一本やりの姿勢は、このアジアと世界のなかで異常な逆流となっています。

 日本と世界の平和のため、米軍補完の役割、装備を拒否するとともに、日米軍事同盟廃棄が必要です。


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