2006年1月7日(土)「しんぶん赤旗」

12人死亡の米セイゴー炭鉱事故

背景に安全軽視政策


 【ワシントン=山崎伸治】米ウェストバージニア州トールマンビルのセイゴー炭鉱で十二人が死亡した爆発事故をめぐって、同炭鉱のかかえる問題とともに、ブッシュ政権下で炭鉱の安全管理が軽視されていたことに批判の目が集まっています。


 事故の起きたセイゴー炭鉱は昨年だけでも二百件以上もの安全・衛生面での違反行為が指摘され、十五回にわたって操業停止の処分を受けていました。二〇〇〇年以来、四十二人の労働者が事故で負傷しており、この数は全国平均の倍といわれます。

■多額の献金

 ところが炭鉱を所有するインターナショナル・コール・グループ(ICG)社はこうした事態に、まったくといってよいほど無反省。ウェストバージニア州の炭鉱会社による無法行為を追及してきた地元紙チャールストン・ガゼットのケン・ワード記者は、会社側がある記者会見で「こうした違反行為がそれほど悪質なら、監督庁はわれわれの炭鉱を閉鎖してしまえばよい」とまで言ったと語っています(五日放送のパシフィカ・ラジオ「デモクラシー・ナウ」)。

 会社側がこれほどまでに開き直れる理由の一つは、違反行為に対する罰金が六十ドル(約七千円)から二百五十ドル(二万九千円)と比較的安いことがあります。

 さらに炭鉱会社による政治への影響力もあります。同州で炭鉱会社の監視を続けるヒラリー・ホスタ氏は炭鉱会社などが州知事や州議会議員などに多額の献金を行っていると指摘します。

 それ以上に今回の事故で注目されているのは、ブッシュ政権が炭鉱の安全を軽視してきた問題です。

■予算の削減

 炭鉱の安全を監督するのは労働省炭鉱安全・衛生局(MSHA)です。二千人規模の同局で、二〇〇一年のブッシュ政権誕生以来、百七十のポストが削られ、与党・共和党多数の議会は予算も削減してきました。

 さらにブッシュ政権のもとで、MSHAの局長など重要ポストに炭鉱会社の役員が次々と就任。MSHAは会社を監視する立場から、経営を支援する立場へと変わったと指摘されます。

 MSHAの元職員だったジャック・スパデロ氏は、二〇〇〇年十月に起きた炭鉱事故の調査に当たりました。ところが「二〇〇一年一月にブッシュ政権が成立すると、調査の打ち切りを命じられ、報告書をまとめるように言われたが、新しい局長に再三、介入された」(「デモクラシー・ナウ」)といいます。

 今回の事故でも、現地で記者会見したのはMSHAではなくICG関係者。ケン・ワード記者は「(MSHAは)質問には答えなかった。鉱山の採掘許可証や地下の地図のコピーを請求しても、『会社側にもらってほしい』といわれ、驚いた」(同)と述べています。


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