2006年1月7日(土)「しんぶん赤旗」

どうみる 国民投票法案

笠井亮衆院議員にきく(上)

九条改憲と表裏一体


 二十日に召集予定の通常国会では、改憲の手続き法である国民投票法案の行方が大きな焦点になります。日本共産党の笠井亮衆院議員(憲法調査特別委員)に、同法案をめぐる問題について聞きました。


■自公民の合意

 昨年十二月二十日に自民党の中山太郎衆院憲法調査特別委員長を中心に、民主党、公明党の担当者が集まり、通常国会で国民投票法案の成立をめざすことで合意しました。

 与党側の提起に対し、民主党憲法調査会の枝野幸男会長は、「技術的な問題がクリアされれば速やかに国会で成立させることが望ましい」と応じたと言われています。自公民三党での議論はそこまできています。

 では一路成立でいくのかというと、各党それぞれに矛盾を抱えています。しかも現在参院には、法案を審議するような委員会はありません。なにより、国民が改憲のための手続き法を望んでいるわけではないという根本問題があり、改憲勢力の思惑通りにいかせてはならないと思います。

■“表の顔”と実際

 私が昨秋の特別国会で憲法調査特別委員会に参加して感じたのは、国民投票法案はある意味で“表の顔”だということです。委員会では国民投票法案が議題となっていますが、実際には改憲案の中身のすり合わせと表裏一体のものです。

 この調査特別委員会の会議や欧州調査(〇五年十一月七日―十九日)と並行して、十月二十八日には自民党が「新憲法草案」をまとめました。九条二項を削除して「自衛軍の保持」を明記するなど「海外で戦争する国」づくりを明確にしました。その三日後には、民主党が「憲法提言」を出し、集団的自衛権を含む「自衛権」を書き込むという九条改定の方向を示しました。

 公明党も太田昭宏・党憲法調査会座長が「九条改正は避けられない」と発言しました。現実の改定の動きを背景にして、そのための国民投票法案をどうするのだという話です。

■日米同盟の強化

 もう一つ重要なのは、憲法改定の動きと日米同盟強化の動きが同時に進行していることです。ちょうど自民党の「新憲法草案」が発表された翌日に日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書で在日米軍再編、基地強化・永久化が打ち出されました。

 日米同盟を地球的規模で拡大強化し、自衛隊が米軍と一体化し海外で戦争する国にする体制づくりが進行し、九条といよいよ両立しえなくなっています。その流れの中で九条改憲の手続き法づくりをやろうとしています。

 日本共産党は「九条改憲のための国民投票法案はいらない」として、衆院憲法調査特別委員会の設置に反対しました。その後の事態がこの指摘の正しさを裏付けていると思います。

 自民党や民主党が、「改憲の中身とは別にして投票法の仕組みだけは憲法九六条に基づいてつくっておこう」といっても、九条改憲と一体のものであることは現実が示しています。

■国民は求めず

 国民投票法はなぜつくられてこなかったのかというと、国民は憲法改正を望んでおらず、国民投票法を必要としてこなかったということです。

 改憲派は「憲法九六条に改正規定があるのに手続き法がないのは立法不作為だ」「国会の怠慢だ」と主張します。しかし、立法の不作為というのは、憲法に基づく法律が整備されていないため国民の権利が侵害されているときに問題にされることです。国民投票法がないために主権者である国民の権利が侵害されているわけではありません。

 一九五三年、自治庁(当時)が案をつくったものの「九条改憲につながるから」という国民の反発があり提出を断念したという経緯がありました。以来五十年以上国民の側から国民投票法案を求める声はあがりませんでした。国民投票法の制定は改憲の条件を整えていこうという動きにほかなりません。

 国民の多くは今、憲法を積極的に変えたいとは思っていませんから立法不作為論は当たらないのです。(つづく)


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