2006年1月4日(水)「しんぶん赤旗」
主張
「国のかたち」
主役は財界ではなく国民だ
経済財政諮問会議(議長・小泉首相)は今年の最優先課題として「歳出歳入一体改革」を掲げています。
諮問会議の民間メンバー、日本経団連会長の奥田碩トヨタ自動車会長や、経済同友会特別顧問の牛尾治朗ウシオ電機会長らは次のようにのべています。
歳出と歳入の構造をどうするかは「国家の有り様そのものだ」―。
諮問会議を担当する与謝野経済財政相は、どんな「国のかたち」をめざすのかが主題だとしています。
■消費税と「一体」で
牛尾氏らは「歳出歳入一体改革」の原則は「小さな政府」「経済活力と財政再建の両立」だと説明します。
小泉内閣の「小さな政府」論が標的にしているのは社会保障と公務員です。米国産牛肉の輸入解禁の圧力や毎年の「年次改革要望書」などアメリカの経済介入は問題にもせず、軍事費は聖域扱いであり、大企業奉仕の根幹は温存を図っています。
「経済活力と財政再建の両立」の中身は、弱肉強食を強める規制緩和や大企業向け法人税減税です。
「行政改革」は両者に共通する課題とされ、公共サービスの民営化による大企業のビジネスチャンスの拡大を狙っています。
日本経団連の総会で奥田会長は、「消費税の拡充を国民に求めるからには、国・地方を通じた行政改革の断行や、歳出の削減・合理化の徹底が大前提となる」とのべています。
「歳出歳入一体改革」は、低所得者ほど負担が重く、大企業は一円も負担しなくて済む消費税の増税と一体の議論です。
くらしへの支援を切り詰め、負担を庶民に背負わせ、富めるものはより豊かに―。こういう「改革」の先にある「国のかたち」は、もはや人間の顔を失っているでしょう。
自民党政治による「国のかたち」は、すでに世界でも異常な姿です。
外資系の多国籍企業が昨年発表した欧米・アジア十五カ国の調査によると、連続休暇を取った人の割合も休暇の長さも日本が最下位です。年金の受給額は先進国で最低水準、生活に必要な費用に対する充足率では全体の下から三番目。年金への満足度は最低となっています。
GDP(国内総生産)の国際比較に共同でとりくむOECD(経済協力開発機構)とEU(欧州連合)の報告は、欧州諸国と比べた日本経済のゆがみを浮き彫りにしています。
報告は一人当たりの実質GDPを各国通貨の購買力を調整して比較。EU十五カ国の平均と比べると日本は家計消費で10%、政府支出の規模でも8%低くなっています。政府支出の内訳を見ると、軍事・治安などへの支出は日本が11%高く、反対に保健・社会保障・教育などは日本が21%下回っています。また、公共投資を含む建設・設備投資は日本が51%も上回っています。
■ゆがみと逆立ち是正を
二〇〇五年度の「経済白書」は「日本は比較的『小さな政府』」だとのべています。ただし、小さいのは社会保障や教育などくらしへの支援であり、公共投資や軍事費は巨大な政府になっているのが実態です。
働くものの権利、くらしと社会保障がないがしろにされ、大企業奉仕と軍事が際立っている―。こうしたゆがみをいっそう広げる「改革」は、まったく改革の名に値しません。
雇用やくらし、いのちと安全を守るルールを確立し、税金の使い方、集め方の逆立ちを是正することこそ日本の経済・社会がほんとうに必要としている改革です。