2005年12月27日(火)「しんぶん赤旗」

来年見直し 男女雇用機会均等法

間接差別・出産理由の不利益…

どう改善されるのか


 男女雇用機会均等法(均等法)がつくられて20年。しかし職場の女性差別は依然、根強く続いています。来年、均等法の2回目の見直しがおこなわれる予定で、審議会での検討が大詰めを迎えています。どんな内容で、問題点は何でしょうか。Q&Aでみてみました。


 問い どんな見直しが検討されていますか?

 答え 厚生労働省の労働政策審議会雇用均等分科会で検討されている内容は、▽間接差別の禁止▽妊娠・出産を理由とした不利益取り扱いの禁止▽男女双方に対する差別の禁止▽ポジティブアクションの効果的推進▽セクシュアルハラスメント対策などです。

 均等法ができてからの二十年間に、女性管理職は2・7%増えただけ、管理職に占める割合も一割以下にとどまっています。賃金は正社員でも男性の68%にすぎません。また妊娠した女性にパートへの転換や退職を迫るケースが増え、セクハラも、厚労省の雇用均等室に年間八千件近い相談が寄せられるほど深刻です。こうした実態を是正する実効ある改正が必要です。

 問い 主に何が問題になっているのですか。

 答え 焦点の一つは間接差別をどう規制するかという問題です。間接差別とは、一見「女(男)だから」という理由ではない基準や慣行だけれど、結果的に一方の性の労働者に不利益を与える差別のことです。直接差別を禁止した均等法ができて表立った差別は少なくなりました。でも男女の格差や差別をつくる仕組みが残されたり、新しくつくられたりしました。

 大企業を中心に広がった「コース別管理制度」などがそうです。全国転勤できるかどうかなどで、賃金も高く管理職になる総合職と、低賃金で昇進・昇格が限られる一般職などのコースに分けます。全国転勤が条件では、将来の結婚や子育てを考えると、多くの女性が総合職の選択をためらってしまいます。男性の十分な家事・育児参加が望める状況ではなければ、なおさらです。そのため総合職の女性比率は5%だけです。

 間接差別を禁止することは、国連の女性差別撤廃委員会からも繰り返し求められています。間接差別の禁止を法の上で明確にするのは当然のことです。ところが、財界が法に盛り込むことに反対したこともあって、審議会の案では、実効性が不十分なものになっていることが問題です。

 問い 具体的にはどういう内容ですか。

 答え 審議会の案は、間接差別として禁止する対象を▽募集・採用時に身長や体重を条件とする▽コース別・総合職の採用時に全国転勤を条件とする▽昇進における転勤経験を条件とする、の三つだけに限っています。

 そのうえ、この三点も企業の業務の上で必要だなどの判断がなされれば、禁止にならないというのです。例えば支店や支社が一つもない会社が、全国転勤の基準を用いてコース別で採用する場合は禁止されるが、そうでない場合は認められることになります。これでは現実に役立たないものになりかねません。対象を限定しないで、間接差別の禁止を明記すべきです。

 問い 差別の是正に大事なことは何ですか。

 答え 企業はもうけのために、いろいろな差別の仕組みをつくりだしてきます。最近では、コース別もやめて女性の多い一般職を派遣に切り替えたり、家庭責任を理由に女性が低く評価されがちな成果主義を導入したりする動きも強まっています。そうした事実上の差別に効果を発揮できる規制が必要です。

 そのためには、気軽に相談できる窓口を広く設置し、権限をもつ救済機関がすぐに差別を改善できる仕組みをつくること、企業側が差別でないというのなら、企業側に資料の提出や差別でないと証明する責任をもたせることなどが必要です。

 また前回の均等法改正(一九九七年)時に、女性の残業や深夜労働など労働基準法の保護規定がすべて廃止され、女性にも長時間労働や健康破壊が広がっています。家庭・生活との両立を難しくする長時間労働の改善や、働く女性の半数を超えたパートや派遣で働く人たちの平等な待遇確立も欠かせません。(日本共産党女性委員会事務局 米沢玲子)

 ▼男女雇用機会均等法 企業の募集・採用から配置、昇進、教育訓練、退職までの女性に対する差別を禁止した法律。一九八五年制定。当初は採用や昇進等が事業主の努力義務にすぎませんでしたが、九七年の改正ですべて禁止規定になりました。その際あわせて労働基準法の女性の時間外、深夜労働等の規制が撤廃されました。

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