2005年12月23日(金)「しんぶん赤旗」

近づく第24回党大会

情勢の中で決議案を読む

人間らしい雇用の破壊

貧困率10年で急増


 日本共産党第二十四回大会決議案は、「ルールなき資本主義」のもとで、「九〇年代末から貧困と社会的格差の新たなひろがりが重大な社会問題となっている」とし、「これらの根底には、人間らしい雇用の破壊がある」と指摘しています(第一章四節)。大企業最優先の政治が国民の生活基盤を急速に掘り崩している現状をみます。

 日本共産党は、人間らしい暮らしの基盤を破壊する攻撃にたいして、社会的反撃をもってこたえるたたかいの先頭にたって奮闘する。とりわけ、庶民大増税に反対するたたかい、社会保障切り捨てを許さないたたかい、人間らしい雇用をもとめるたたかいは、直面する熱い焦点である。(決議案第一章四節)

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■急増する就学援助

 「東京の東部地域ではこの五年間で全区が30%を超えた」。十日、東京都内で開催された「教育財政シンポジウム」(同実行委員会主催)で、学校事務職員が衝撃的な報告をしました。

 「30%」というのは、教育扶助(生活保護世帯が対象)や就学援助(生活保護に準じる所得水準の世帯が対象)を受ける公立小中学校の児童生徒数の割合です。

 就学援助は、学用品費や入学準備金、給食費などを支給する制度です。多くは生活保護基準の一・一―一・三倍の所得水準の世帯が対象。三人に一人の児童生徒が生活保護基準ぎりぎりの生活環境に置かれています。

 東京では特別区二十三区のうち九区が30%超。足立区の42・00%を最高に墨田区36・90%、板橋区36・55%が続きます。

 足立区では教育扶助や就学援助を受ける児童生徒の割合が一九九八年には20%台半ばでしたが、二〇〇〇年には30%台になり〇三年には40%台と急増。中学校の就学援助対象生徒数が当初見込みより百七十二人増え、〇五年度補正予算に千五百万円を計上しました。

 足立区の男性中学教諭は「クラス三十八人のうち半数を超える生徒が受けています。就学援助の対象でない生徒にも給食費の滞納が増え、困窮世帯の増加はここ五、六年顕著です」と話します。

 金融広報中央委員会(事務局・日本銀行内)が十一月に発表した「家計の金融資産に関する世論調査」によると、「貯蓄を保有していない」二人以上世帯が前年より0・7ポイント増の22・8%と、記録が残る六三年以来で最高になりました。一方では貯蓄を増やしている世帯もあり、格差拡大が浮き彫りになっています。

 昨年から調査対象に加えた単身世帯の無貯蓄比率は41・1%(前年比6ポイント増)と五割に近づき、これを加えた全体での無貯蓄比率は23・8%(同0・9ポイント増)です。

 国際比較でみても、それは顕著です。OECD(経済協力開発機構)の比較調査では、日本の貧困率(全世帯の年収の中央値の半分以下しか収入のない世帯の人口比率)は、15・3%に達しています。十年ほど前の13%台から急増しています。調査した加盟二十五カ国のなかで第五位、OECD諸国の平均10・2%を大きく上回っています。“貧困ライン”は、年間所得二百五十八万円未満に相当します。

 生活保護受給者も十年前は六十万世帯だったのが、現在は百万世帯を突破しています。

 小学生三人を抱え、就学援助を受けている東京・板橋区の女性(43)はパートで家計を支えています。「ぎりぎりの生活です。おとなになるまで無事育てられるかどうか本当に不安。安心して暮らせる生活がほしい」

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■年収300万円以下時代

グラフ

 これらの根底には人間らしい雇用の破壊があります。大企業・財界は、中高年の「リストラ」と新規採用の抑制によって、正規雇用を減らし、パートタイマーや派遣、業務請負など非正規雇用を激増させています。これらの雇用形態は不安定で、賃金も正規と比べて極端に低く、社会保障制度からも排除されています。

 総務省「労働力調査」によると、非正規は十年前と比較すると五百九十三万人増加し、〇四年度は千五百六十四万人にのぼっています。一方で正規は三百九十五万人減少し、三千四百十万人になっています。実に労働者の三人に一人、若者の二人に一人は非正規労働者として働いています。

 「求人の約四割が派遣か請負の仕事」(首都圏のハローワーク職員)というのが実態です。

 雇用破壊は、深刻な賃金破壊をもたらしています。国税庁の民間給与調査でも、年間の平均給与のピークは九七年の四百六十七万三千円で、以後七年連続マイナス。〇四年は四百三十八万八千円と九七年と比較して二十八万五千円の減です。

 給与階層別でみると、年間三百万円以下は全体の37・5%で、女性では65・5%。女性の場合、二百万円以下でも42・5%と約半数を占めます。まさに「年収三百万円以下時代」の到来です。厚生労働省によると、フリーター(十五歳―三十四歳)の平均年収は百五万八千円で、同年代の正社員の四分の一です。雇用の破壊は、生活基盤そのものの破壊です。

 背景には、財界の戦略があります。九五年に日経連(当時)が作成した「新時代の『日本的経営』」がその端緒となっています。正規雇用は管理職など一部の基幹的部分のみで、それ以外は「流動化」する方針を打ち出し、政府が労働法制の相次ぐ「規制緩和」でそれを推進しました。

 労働者派遣法を連続改悪し、製造業にも派遣を拡大したのもその一つ。非正規に置き換えるリストラを後押ししてきました。リストラすればするほど企業が減税される「産業再生法」をさらに改悪し延長もしてきました。極端に低い最低賃金額も貧困層増大の原因になっています。日本の最賃は、生活保護基準以下。労働者全体の平均賃金の27%程度の水準です。

 非正規の増加は、保険料がきちんと支払えず、社会保険財政の基盤が崩れることが懸念されています。貯蓄がなければ国民年金だけでは暮らしていけません。生活保護予備軍となる可能性は高まり、若者は結婚できず、未婚化と少子化で次代の働き手の減少に。雇用の破壊がもたらす社会への否定的影響ははかりしれません。


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