2005年12月23日(金)「しんぶん赤旗」

初の人口減1万人

厚労省推計2005年

出生率低下つづく


グラフ

 ことし一年間に生まれる子どもの数(出生数)が死亡数を約一万人も下回り、統計をとりはじめて以来初めて日本の人口が「自然減」となる見通しであることが、二十二日公表の厚生労働省調査(人口動態統計の年間推計)でわかりました。

 推計によると、出生数は、過去最低だった〇四年よりも四万四千人少ない百六万七千人です。死亡数は、四万八千人増の百七万七千人としています。出生数が死亡数を上回る人口の自然増がマイナスに逆転するのは、統計データがない戦争中、戦争直後(一九四四―一九四六年)をのぞき、統計をとりはじめた一八九九年(明治三十二年)以来初となります。

 また日本における外国人を含めた総人口ベースでも〇五年は四千人減と推計されました。

 年間推計は、人口動態統計の十月までの実績に基づくもの。十一、十二月に例年と異なる変動があった場合でも実績の0・5%程度であり、「自然減」は動かないと厚労省はみています。人口動態統計の〇五年の実績発表は来年六月ごろ。

 国立社会保障・人口問題研究所では〇七年から総人口が減少と推計していました。

 予測よりも二年早く「人口減少社会」に突入する見込みです。

 同研究所は今回の「自然減」について、「高齢化にともなう死亡者増にくわえて、インフルエンザの流行で死亡者が多かったのが影響している。出生率の低下に歯止めがかからないことも原因」と分析。厚労省は「一時的要因で短期的に増減があるかもしれないが、中長期的にさらなる減少はさけられない」としています。


■解説

■歯止めかからない人口減社会

■対策に逆行の「小泉改革」

 日本の人口減について、予測より一年早い二〇〇六年にも可能性ありとした政府の少子化白書の発表から一週間足らず。厚労省の人口動態統計は今年〇五年にも人口減がありえるとの推計を明らかにしました。政府あげて少子化対策に力を入れるといいながら、予測を超える人口減社会の進展に歯止めがかからない状況は深刻です。

 今後の日本の人口は、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計)によると、二〇〇六年にピークの一億二千七百七十四万人に達して翌〇七年から減少に反転。二〇五〇年には一億五十九万人で一九六七年の水準になります。さらに二一〇〇年には現在の半分の六千四百万人と予想されています。

 人口減の原因に、出生率の低下の問題があります。この打開策の中心となるのが、仕事と子育てが両立できる社会的環境の整備です。日本でいえば、とくに長時間労働の是正と賃金・雇用環境の保障が求められます。

 ところが日本の現状はこれに逆行。賃金も支払わず労働時間を長くするサービス残業が当たり前で、政府は年間千八百時間という時短目標も取り下げる法案を成立させました。若年労働者の雇用では正社員がどんどん減り、低賃金を我慢させられる非正規雇用が激増しています。こうした流れを「構造改革」と称して推進しているのが、いまの小泉内閣です。

 日本の人口が極端に落ち込むことで有名な「ひのえうま」より少ない出生数で、「1・57(出生率)ショック」と呼ばれた一九八九年からすでに十六年。政府が少子化に「危機感」を抱いて数々の対策を打ち出しながら有効策とならず、ついに人口減社会を迎えながら、これに歯止めをかけるどころか、出生率低下に拍車をかける政治をすすめているところに、問題の深刻さがあります。

 人口減推計にあたり川崎二郎厚労相が出した「大臣談話」(二十二日)が、対策の第一に掲げたのは「社会保障制度改革」でした。人口減少社会に対応するためにも、昨年の「年金改革」、今年の「介護改革」、来年の「医療改革」の断行を求め、「歩みを止めることなく社会保障制度の改革を行ってまいりたい」と表明しました。

 ここでいう改革はどれも、少子化による財政対策を口実に国民に負担増を求めるものばかりです。年金は少子化の進展に連動して給付を減らすというもので、人口減をむかえさらに給付削減を強めよといっていることと同じです。安心して子育てができる環境どころか、家計をますます息苦しくするものです。

 「談話」の終わりのほうで「子育てしながら安心して働くことができる社会をつくることは重要」とのべていますが、いまの小泉内閣には中身のある具体策はありません。小泉政治の転換がここでも不可欠となっています。(斉藤亜津紫)


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