2005年12月22日(木)「しんぶん赤旗」

主張

耐震偽装事件

組織犯罪の解明を徹底的に


 耐震偽装事件で、警察が強制捜査に乗り出しました。建築物の構造計算を偽造した姉歯秀次・元一級建築士、平成設計と工事をした木村建設、マンション建築主のヒューザー、ホテル建設などの全体を指揮した総合経営研究所、民間検査機関のイーホームズ、日本ERIなど、関係先約百二十カ所を家宅捜索しています。

 姉歯氏が、国会の証人喚問(十四日)で、「私一人でできることではない」と述べたように、今回の事件は、組織犯罪の疑いが濃厚です。偽装の構造を徹底的に明らかにしなければなりません。

■経費削減で安全もカット

 姉歯氏は、木村建設からの圧力が偽装を行う動機であり、「これ以上できない」と言ったのに、さらに鉄筋を減らすよう求めてきた木村建設には法令違反の認識が「十分にあったと思う」と証言しています。

 木村建設の篠塚元東京支店長は、鉄筋を減らすよう求めたことを認めつつも、「法律の範囲内の話」だったとのべました。しかし、「構造のプロ」が「これ以上できない」というのに、判断根拠をもたない素人が「もっと鉄筋を減らせ」と求めるのは、建築基準法を守ることよりコスト削減を優先しているからです。

 「暴力団の親分は『誰々を殺してこい』と直接には言わない。『なんとかしろ』みたいに言う。それに比べれば、『鉄筋減らせ』というのは直接的だ」と指摘した議員もいました。

 木村建設は、姉歯事務所以外にも鉄筋を減らすよう求めていました。同社が建築したホテルで、姉歯事務所以外の設計事務所を使っているのに、「姉歯物件」なみに鉄筋量の少ないものが八件あります。

 鉄筋など建物の強度にかかわる構造部分まで徹底的に削るやり方を木村建設に指導したのは総合経営研究所です。総研は、ホテル建設などにあたって、売り上げ予測から逆算して建築費を決め、採算が合うようにしていました。コスト削減の対象として重視したのは、鉄筋や鉄骨、セメントの量などです。

 コストダウンを「どのように追求しても…確認済みという合格ラインが機能していれば何の問題もない」とのべたのは、ヒューザーの小嶋社長です。

 もちろん、確認検査機関が偽装を見逃さなければ、これほどの問題にはなりませんでした。その責任は重大です。しかし、小嶋氏が、耐震偽装をすぐ公表すべきではないと圧力をかけた経過を見ると、“建築確認がとれればこっちのもの。それをひっくり返すなどとんでもない”という姿勢であることがわかります。偽装発覚後に、マンションの引き渡しを行ったりしたのも、そういう姿勢と無関係ではありません。

 どの角度からみても、もうけ至上主義の競争が、安全までもカットする結果になっていることがわかります。偽装の具体的経過と責任の所在を明らかにして、しかるべき法的処罰を行うことが必要です。それは、被害者の救済のためにも重要です。

■国会が果たすべき役割

 一九九八年の建築基準法改悪による建築確認の民間開放―安全確保の「丸投げ」化が、もうけ至上主義を助長し、制度の信頼性を損なう事件につながりました。

 国会は、事件の真相を究明し、問題点を徹底的に洗い出して、建築基準法など関係法令を抜本的に改善しなければなりません。にもかかわらず、与党側が、参考人招致や証人喚問に難色を示しているのは、国会としての責任を放棄する態度です。


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