2005年12月21日(水)「しんぶん赤旗」

主張

財務省原案

赤字の元凶を放置し負担増


 二〇〇六年度予算の財務省原案が各省庁に内示されました。

 一般会計歳出は約八十兆円で、今年度当初と比べて二・五兆円の減少となっています。

 小泉首相は新規国債の発行が約三十兆円となったことを自賛していますが、庶民増税や医療改悪など家計への負担増と地方の切り捨ての結果にすぎません。

■国民生活に犠牲転嫁

 谷垣財務相は国債の発行を三十兆円以内に抑制できた理由として、「構造改革」と「定率減税の廃止など税制改革」の成果だとのべています。

 予算編成に向けた「構造改革」とは高齢者狙い撃ちの「医療制度改革」であり、「三位一体改革」の名による義務教育、児童扶養手当や児童手当、施設介護給付費の国庫負担割合の引き下げにほかなりません。

 医療については患者負担増に加えて、診療報酬の大幅引き下げも盛り込みました。医療・介護サービスを支えている地域の医療機関の経営難をいっそう悪化させ、医療サービスの供給基盤を掘り崩す危険があります。患者と病院の双方を締め付ける医療いじめです。

 定率減税では来年一月から所得税分の半減がスタートします。六月には住民税分を半減し、さらに〇七年に残りの半分を全廃する計画です。

 来年度の税収増加見込み一・八兆円に対して、来年度中に表れる定率減税半減・廃止の所得税分の増税額は、およそ一・三兆円に上ります。

 このように国民生活に犠牲を転嫁して実現した国債発行三十兆円を小泉首相は自慢しているのです。

 財務省の資料によると、来年度末の国と地方の長期債務残高は七百七十五兆円に達し、GDP(国内総生産)の一・五倍となっています。

 財界と小泉内閣は、財政悪化の原因があたかも社会保障予算にあるかのように言っていますが、実態は違います。

 国・地方の長期債務のGDP比は、一九八〇年代には48%から61%に13ポイント増加したのに対して、九〇年代には59%から一気に倍加して118%に、二〇〇一年の小泉内閣発足以降も20ポイント近く増加しています。

 高齢化の進展を受けた社会保障関係費の増加は急にはじまったわけではありません。七〇年代から今日まで、ほぼ年平均4%程度のなだらかな増加を示しています。

 他方で国と地方の公共投資は八〇年代半ばの年間二十五兆円程度から、九〇年代には五十兆円程度に倍増しました。軍事費も九〇年代に約四兆円から五兆円に増えています。

 大赤字の歳出面での元凶が、公共投資と軍事費の異常膨張と無駄遣いにあったことは明らかです。

 歳入面での要因は、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税で税制を空洞化させてしまったことです。とりわけ、景気を大きく悪化させた小泉内閣のもとで、減税と不況の両面の要因で法人税収はがっくり落ち込みました。最近、大企業は過去最高益の更新を続けていますが、それでも法人税収は九〇年当時の半分ほどにとどまっています。

■財界の「既得権益」

 小泉内閣は公共事業では道路特定財源を温存し、関空二期工事などのムダを続け、軍事費は聖域にしています。庶民増税の一方で、手厚い大企業向け減税を継続します。

 財界・大企業の巨大な「既得権益」を守る政治が財政赤字の元凶です。ここにメスを入れることなくして、財政の危機を打開することはできません。


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