2005年12月16日(金)「しんぶん赤旗」

主張

与党税制大綱

これほど「安易な増税」はない


 自公両党が来年度税制の与党大綱を決定しました。所得税・住民税の定率減税を二〇〇七年に廃止すると明記し、消費税増税は〇七年度をめどに実現をめざすとしています。

 いとも安易に庶民増税を盛り込む一方で、大企業には、来年三月で期限が切れるIT(情報技術)投資減税の代わりに新たなIT減税を創設する気遣いを示しています。

 定率減税と同時に実施した法人課税の税率引き下げ、所得課税の最高税率引き下げはそのままにして、指一本触れようとしない姿勢です。

■納得できない不公平

 政府・与党は「景気回復」を定率減税の廃止の理由にあげています。

 大企業・大銀行は過去最高益を更新していますが、民間給与の総額は下がり続けています。この間、小泉内閣は所得税の配偶者特別控除の廃止や高齢者課税の強化をすすめ、年金保険料、医療費など社会保障の負担増を国民に押し付けてきました。

 定率減税が実施されてきたにもかかわらず、税と社会保険料を合わせた公的負担は増え続け、家計の可処分所得を削り取ってきました。

 庶民の家計は回復には程遠い状態です。依然として家計消費が冷え込んでいるため、定率減税の全廃や消費税増税には日本商工会議所や日本百貨店協会など、経済団体からも反対・慎重意見が出ています。

 財政破たんは深刻であり、多くの国民も財政に不安を持っています。無駄遣いを正すとともに、国の歳入を見直すことは政治の責任です。

 しかし、政府・与党は庶民増税の半面で、空前の利益をかせぎ、昨年末時点で八十二兆円の余剰資金を抱える企業には手厚い減税を継続します。株を動かすだけで大もうけを上げている「錬金術師」の株式売買益には、わずか10%の特例税率を認めています。こんな不公平に納得できるわけがありません。

 異常な財政赤字をつくった原因は自民党の大失政にあります。一九九〇年代に公共投資に湯水のように税金をつぎ込み、軍事費を増やして歳出を膨張させました。大企業・大資産家に減税の大サービスで税制の空洞化を広げてきました。

 財界と大企業の巨大な「既得権益」にメスを入れることなしには財政危機は打開できず、社会保障の財源も生み出せません。

 総選挙で自民党は「サラリーマン増税ありきを『許さない!』」と宣伝し、最近、武部幹事長は消費税増税論に「安易な増税は許さない」と大見えを切っています。これほど空疎な言葉はありません。与党大綱が打ち出したのは「安易な増税」そのものです。

 日銀が十五日に発表した統計によると、この一年で家計の金融資産のうち現金・預金が四・四兆円減り、株式・投資信託が二十九兆円増えました。すでに預貯金のない世帯は二割を超えていますが、庶民の家計が預貯金を取り崩す一方、大資産家が投資によって資産を大幅に積み増している実態が表れています。

■格差広げる政策を転換

 財界と小泉内閣が推進しているのは、貧困と格差をいっそう広げる経済政策・税制です。竹中総務相は賃金は引き続き抑制すべきだと講演。財界代表として政府の規制改革・民間開放推進会議の議長を務める宮内義彦オリックス会長は雑誌インタビューで、社会の階層化は「やむを得ない」と断言しています。

 こうした発想が政府・与党の税制論議の背後にあります。社会を亀裂と荒廃に向かわせる経済政策の転換を求めます。


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