2005年12月6日(火)「しんぶん赤旗」

学問文化

2005 回顧 文化行政

芸能実演家 厳しい実態

地位向上策を本格的に


 芸団協(日本芸能実演家団体協議会)が五年に一度行っている芸能実演家の実態調査を発表しました。調査結果では、芸能実演家が年金や失業への不安をもっていることや、年収も百万円未満の割合が五年前の6%から14・7%と倍近くなっていることなど、その厳しい現実が明らかにされました。

 また、今回初めて調査対象に加えられたアニメーターでは、年収百万円未満が26・8%と四分の一以上を占めています。文化芸術振興基本法は「専門家の地位向上」を基本理念に掲げましたが、制定後四年たっても前進していると言いがたいことが明らかになったわけで、事態の改善が強く求められています。

 しかし、文化庁予算は、千十六億五百万円で伸び率は0%。来年度概算要求では、映画支援は一億円のマイナス、芸術文化振興会への助成も四億四千三百万円のマイナスとなっており、期待にこたえるものとはなっていません。

■「構造改革」路線と「基本方針」見直し

 小泉内閣の「構造改革」路線は、文化にも大きな影響を与えています。九月には、「規制改革・民間開放推進会議」が、「小さくて効率的な政府」をめざすとして、美術館・博物館の「民間開放」を推進するよう求め、十月には「独立行政法人に関する有識者会議」が、さらなる「効率化」を求めて国立美術館・博物館の統合を打ち出しました。これにたいして、著名な文化人が反対声明を発表し、社会的注目を集めました。

 国の文化行政の「基本方針」の見直しが始まりました。文化関係者の要望をとりいれ、文化活動の発展をうながす議論が期待されます。

■ 「コンテンツ」 の新たな利用と著作権法

 文化審議会著作権分科会が、二月、「著作権法に関する今後の検討課題」を発表し、私的複製のあり方や著作権の保護期間の見直しなど、著作権法の根幹にかかわる問題を検討課題としてあげました。

 今年は権利制限の見直しと私的録音録画補償金を中心に議論されました。携帯音楽プレーヤーの中心になっているハードディスク内蔵型録音機器を、私的録音録画補償金に適用するかどうかは社会的関心も集まりました。適用は見送りになりましたが、来年度も制度そのものをふくめ検討されることになりました。

 こうした背景には、インターネットでの音楽配信や映像コンテンツの利用が実際に始まりつつあることがあります。著作物の新たな利用にあたって、社会全体の利益に配慮しながら、作り手などの権利をどう保障するのかなどが問われてきています。

 活字文化の振興を目的に、公共図書館の設置や学校図書館にかかわる職員の配置などをもりこんだ「文字・活字文化振興法」が制定されました。公立図書館の低い設置率の改善や学校図書館の充実に活用されることが求められます。国際的には、ユネスコが、各国の文化の多様性を保障する施策を認めた「文化多様性条約」を採択しました。

辻 慎一(党学術・文化委員会事務局次長)


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