2005年12月5日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

お年寄りの“足”守れ

乗合タクシー


 病院や買い物などにいく住民の足を確保するため、大型タクシーや小型バスをつかった、乗合タクシー事業をすすめている自治体が、各地に生まれています。各地の例から、島根県斐川町(ひかわちょう)と群馬県玉村町の場合を紹介します。


■家まで来てくれ助かる

■島根・斐川町「まめながタクシー」

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 島根県斐川町では、自宅と病院や町立図書館などを結ぶ高齢者外出支援事業、「まめながタクシー」(出雲弁でまめながは元気なの意味)が運行されています。運行試行期間をへて、二〇〇四年四月から本格稼働し、お年寄りから喜びの声が上がりました。

 役場近くの女性(67)は、「いいものができてよかった。家の若い者は仕事があり手をとることができない。同じ年代の者は不自由を感じています。一回三百円は安い。助かります」。

 お年寄りの交通手段を長い間待っていた女性(81)は、「共産党の議員さんが住民の要求を町へ粘り強くいわれた結果だと思います。よかったと思います」。

 まめながタクシーは、月曜から金曜まで、一日七便のジャンボタクシー(九人乗り)が役場前から左回り、右回りで町内を運行します。三カ所の公民館と出雲市内の総合病院とは大型タクシーが結んでいます。

 利用者は、事前に登録し前日までの予約が必要で、六十五歳以上、一人で乗車可能な人です。(不自由な人は付き添いがあれば可能)

■路線バスが98年に撤退

 斐川町は、民間の路線バスが一九九八年に撤退した後、JR以外の公共交通機関は出雲空港行きのバスのみであり、県下のなかでも唯一路線バスがない不便な町になりました。

 日本共産党町議団(井原優、安部浩二両議員)は、井原町議が九五年のいっせい地方選挙で初当選以来、議会の一般質問、党の住民アンケートや町長交渉などで、交通手段の確保について、再三にわたって町へ要求し、運動をしてきました。

 なかなか実現に至らなかった要因のなかには「本町は散居村で、まちの中心が見えない」の声や、保守系の議員から「マイカー時代にバスを走らせても、町民が乗らない」などの声がありました。九九年の町長選挙で、町長が代わり、党と住民のこの要求に、町長が前向きの回答をしました。

■人口増える元気なまち

 斐川町は比較的生活道路が整備されている状況から、国の「高齢者丸ごと安心生活サポート事業」(国負担四分の二、県・町各四分の一)のタクシー方式を活用して実施することを決定。二〇〇三年の九月議会で、タクシー運行のための補正予算千四百万円が提案されました。実際の運行は町内にあるタクシー会社(二社)との契約です。

 斐川町は、市町村合併の住民投票(〇三年十二月実施)で単独町政を決め、県内のまちの人口が減り続けるなかで、人口が増える(人口二万八千人)元気なまちです。〇三年十月に町立図書館をオープンさせ、昨年四月に「まめなが一番館」が開館し、高齢者の健康を守る施設もできました。 「三位一体」の改革で地方財政が逼迫(ひっぱく)し、まめながタクシーの事業は町単独事業になりました。井原町議は、「高齢者の健康を守ることは、自治体の仕事であり、住みよいまちをつくることになります」と、頑張っています。


■安心して通院できます

■群馬・玉村町 「たまりん」

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 群馬県玉村町は前橋市・高崎市・伊勢崎市などの県内大都市に隣接し、都心から百キロ圏内にあるため、近年は、これらの都市のベッドタウンとして急激に人口が増加し、三万八千人を超える町になりました。どことも合併しない「自律」の道を選択しています。

■車中心社会作られたが

 町には鉄道もなく公共交通といえば前橋市との共同支援で運行しているバス路線が一つあるだけという状況でした。群馬県は自動車の保有率が全国的にも高く、車中心社会が形成されて車を持たないお年寄りや子どもたちにとっては、病院通いやスーパーなどの買い物もままならない大変な状況が生まれていました。

 日本共産党町委員会が行った、町内に点在する文化センターや図書館、老人センター、海洋センターなどの公共施設の利用状況調査でも、利用者が施設の周辺住民にとどまっている実態が明らかになりました。お年寄りを中心に「隣の伊勢崎市では『ふれあいバス』が運行されている。玉村町でも循環バスの運行で交通弱者の足を確保してほしい」との声が高まってきました。

 党は、長寿会などに呼びかけて署名運動に取り組みました。町内にある県立女子大学の学生からも「循環バスを」との声が寄せられました。一九九八年に行われた町議選に「無料循環バスの運行」を公約に掲げてたたかいました。

■住民と党共同利便性向上も

 九九年の町議会の一般質問で日本共産党の宇津木治宣議員がこれらの運動を背景に「交通弱者のための町内循環バスの運行を」とせまり、町長から、「二〇〇一年から運行したい」との答弁を引き出し住民と共同の運動が実る形となりました。党議員は料金の問題、バス停やダイヤの改善、車いすでも乗れるようになど住民や利用者の声を取り上げました。

 〇一年十二月に百円で乗れるワンコインバス「たまりん」として町内を五コース、各六便で運行が始まりました。運行開始後も無線機の装備や逆回りコースの設定、コース内ならどこでも降りられるなど、利便性の向上を求めました。

 現在、高崎市の「ぐるりんバス」、伊勢崎市民病院を経由し「ふれあいバス」に接続する便が加わって七コースで運行しています。昨年の年間利用者は延べ二万四千八百十三人に上っています。

 「たまりん」を使って市民病院に通っているお年寄りは「若い者の手をわずらわせることなく安心して通院できる」と喜びの声を語っています。

 町が「自律」を決めたことから「年間二千万円を超える町負担を削れ」とバスの廃止の意見も一部に出ています。党と党議員は「自律を理由にした福祉の切り捨てを許さない」とがんばっています。


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