2005年12月4日(日)「しんぶん赤旗」

主張

政策金融「改革」

無視された中小企業の声


 経済財政諮問会議が決めた「政策金融改革の基本方針」は、中小企業向けの政府系金融機関の統廃合・民営化を打ち出しました。

 中小企業金融公庫と国民生活金融公庫は国際協力銀行などとともに、新設する機関に統合。商工組合中央金庫は完全民営化する方針です。「政策金融を半減」すると明記し、今後は「部分保証、証券化、間接融資」を活用するとしています。

 天下りの廃止については、あいまいな表現で逃げています。

■経済の主役にどう対応

 新設する機関は、中小企業支援策の中心である直接貸し出しを大幅に縮小し、従来とはまったく異なる機関に変質する危険があります。

 中小企業は全企業数の99%、従業員数の八割以上を占める日本経済の主役です。ことしの中小企業白書が強調しているように、新たな雇用を生み出し、独自の研究開発や新分野への進出に果敢に挑戦する日本経済の活力の源泉です。

 日本商工会議所など中小企業団体が会員企業に実施したアンケートでは、銀行が貸し渋りに走る中で、公的金融の支援で何とか乗り切ったという声が寄せられています。

 アンケートには、新たに起業する際や、中小企業が新規分野、新たな研究開発に乗り出そうというときの政府系金融の役割を評価する声が多数寄せられています。実績や担保がなければ民間銀行は相手にしてくれず、政府系金融の支援でようやく事業を立ち上げることができた―。

 中小企業向けの公的金融を縮小することは、経営難が続く中小企業に深刻な打撃を与えると同時に、日本経済の活力の源泉を干上がらせ、将来に大きな禍根を残します。

 「基本方針」は「小さな政府」を実現するために「政策金融を半減」するとのべています。日本は「資金余剰」なので、「中小企業といえども、量的補完は国が行う必要はなくなった」とも言っています。

 中小企業向け三機関への財政負担は八百億円にも満たず、米軍への「思いやり予算」の半額にも届きません。真剣に財政を考えるなら、こんな無駄遣いこそ改めるべきです。

 「資金余剰」は大企業・銀行の話で、庶民や中小企業には資金が回ってこないから困っているのです。

 三機関が民業を圧迫しているという議論があります。しかし、銀行の貸し渋りが激しいときに、公的金融は融資を増やしてきました。銀行の欠点を三機関が「補完」している関係です。

 総務省は、中小企業分野で政府系金融が「補完の関係」を超えているかどうか金融機関にアンケート調査をしたことがあります。それによると大銀行のすべてが「超えている」と答えたのに対して、信金・信組では三割程度にとどまっています。

■「民業圧迫論」の出所

 全国銀行協会が四年前にまとめた提言は、政府系金融の低利貸し出しのために銀行が貸出金利を引き上げられず、「収益力向上の阻害要因となっている」とのべています。

 「民業圧迫論」の出所は大銀行です。貸し渋りで中小企業を痛めつけている大銀行が、貸出金利を引き上げる邪魔になっているとして「民業圧迫論」を主張しています。身勝手にもほどがあります。

 小泉内閣の最初の「骨太方針」は明確にのべていました。郵政民営化と公的金融の抜本見直しにより、民間金融機関の「活動の場と収益機会を拡大する」―。

 中小企業向け公的金融の縮小にはまったく道理がありません。


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