2005年11月26日(土)「しんぶん赤旗」

主張

定率減税廃止答申

あまりにも不公平、道理なし


 政府税制調査会が二〇〇六年度の税制改定を小泉首相に答申しました。所得税・住民税の定率減税を廃止すると明記しています。

 自民、公明も与党税制大綱に定率減税の廃止を盛り込む方向です。

 「恒久的な減税」として実施された定率減税を廃止すれば、総額で三・三兆円の増税になります。

 「景気の現状」と「導入時の議論」を踏まえるなら廃止してもいい、と石弘光・政府税調会長は説明していますが、事実を無視しています。

■「恒久的な減税」だった

 景気が良くなったと言いますが、バブル期を上回る史上空前の利益を上げている大企業とは対照的に、民間サラリーマンの給与総額は減り続けています。国税庁の「民間給与の実態」によると、サラリーマンの給与総額は定率減税を導入した一九九九年以降、六年連続でマイナスとなり、九八年の水準から二十一兆円も落ち込みました。厚労省の国民生活基礎調査によると「生活が苦しい」と答えた世帯は過去最悪の55・8%に上っています。

 家計収入は定率減税の導入時より悪化し回復とは程遠い冷え込みが続いています。景気の実態は定率減税を継続する理由となることはあっても廃止する理由にはなりえません。

 谷垣財務相は、「定率減税は、小渕内閣の時に当時の経済状況を受けて異例の措置としてやったもの」であり、「異例の措置」は整理する必要があると言っています。

 九四年から今年まで、九兆円負担増を強行した九七年を除いて、何らかの「特別減税」が実施されなかった年はありません。家計の所得がこれほど落ち込んでいるときに、家計への減税措置をやめることこそ「異例の措置」です。

 定率減税に「異例」の部分があるとすれば、それ以前の特別減税のように一年限りの時限措置ではないということです。当時の小渕首相は、定率減税は「期限を定めないという意味でまさに恒久的な減税」だと答弁しています。

 政府税調は九九年度の「税制改正に関する答申」で、「個人所得課税の減税は最高税率の引下げに中堅所得者層に配慮した定率減税を組み合わせて行う」とのべています。

 政府は、この「恒久的減税」で、所得税の最高税率50%を37%へと大幅に引き下げました。対象は年収三千五百六十五万円以上、人数にして七万人程度という一握りの高額所得者です。定率減税を同時に実施することなしに、「金持ち減税」批判に対応できませんでした。金持ち減税を続ける一方で定率減税を廃止するのは不公平の極みです。

■財政と景気考えるなら

 「恒久的減税」では大企業向けに法人税率の引き下げもセットで実施しました。大企業は史上空前の利益の使い道に困り、昨年末の時点で八十二兆円という途方もない余剰資金を抱えています。

 財政や景気について真剣に考えるなら大企業に相応の負担を求め、雇用や賃金にも配当させることが重要です。

 日本共産党は「庶民には増税、大企業には減税」のやり方には道理がないと追及してきました。これがマスメディアの論調を動かし、政府税調答申も、IT(情報技術)投資減税など、三年の期限付きで導入した大企業向け減税を期限通り打ち切ることを盛り込みました。

 庶民増税を中止に追い込み、税制の不公平を是正させるために、いっそう世論を広げましょう。


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