2005年11月18日(金)「しんぶん赤旗」

石綿 救済に数百億円

政府方針 低水準の国・企業負担


 アスベスト(石綿)が原因で中皮腫や肺がんになり、労災補償の対象外とされていた被害者救済措置について、政府は、遺族一時金や葬祭料などを当面公費で支給し、国と企業負担総額を数百億円規模の低い支給水準にとどめようとしていることがわかりました。十七日、環境省が日本共産党の吉井英勝衆院議員に明らかにしました。

 政府は、今年度の補正予算で約三百億円を計上、来年夏ごろまでに新法にもとづく救済制度スタートを検討しており、遺族への一時金支給額は約二百六十万円前後、葬祭料二十万円で調整しています。

 政府は、労災認定外で死亡した労働者の家族や周辺住民には遺族一時金、葬祭料を支給、闘病中の患者には医療費の自己負担分と療養手当の支給を検討しています。現時点での死亡者は一万人弱と推計しており、遺族に支給される総額は約三百億円程度。闘病中の被害者に対する救済措置のうち、二○○七年度以降に支払う治療費などの財源などは、原則として石綿を扱っていた企業に負担を求める方向です。

 救済制度に先立ち、遺族一時金や治療費を支払う基金を○五年度内に新設する方針で、給付に必要な財源を国・自治体・原因企業で分担。○六年度分の治療費なども公費から支払う方針。闘病中の被害者には、治療費の自己負担分のほか、療養手当として月額十万円程度の支給を検討しています。時効で労災補償を受けられなかった労働者は労災補償に準じた措置を盛り込みます。

 企業負担については、アスベスト使用量に応じて企業に負担を求めるのではなく、労災認定件数をベースに負担を求める方法を検討しています。


■救済対象を広く

 ●日本共産党の吉井英勝衆院議員(党アスベスト対策チーム責任者代理)の話 国民の不安の声におされ、政府も早く救済の手を打たざるをえなくなったという点では前進です。しかし、検討されている救済策は、被害補償額が数百億円程度と低く、救済対象も中皮腫・肺がんに狭めるなど、国の責任と製造・販売・使用してきたアスベスト企業の責任があいまいとなっています。

 中皮腫、肺がんだけでなく労災病に指定されている良性石綿胸水とびまん性胸膜肥厚なども救済する必要があります。工場周辺の住民、労働者の家族の健康診断・治療体制をつくっていくことも大事です。被害者の全面的救済、新たな被害の予防に力をつくしていきたい。


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