2005年11月7日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

鉄道を“育てる”


 鉄道は通勤、通学などの足として住民の暮らしを支えてきました。住民運動もあってJR富山港線を路面電車にして本数や駅を増やす工事が進んでいる富山県。JR水郡線や鹿島鉄道線の存続、充実に向けて高校生らの運動がひろがっている茨城県。この両県からのリポートを紹介します。


■運動が力に 路面電車化へ進行

■富山

■来年度開通へ

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 来年度の開通めざし、富山市では、JR富山港線の路面電車化にむけて、富山駅北口付近の道路に軌道を敷く工事がすすんでいます。

 富山駅の北側、岩瀬浜駅までの約八キロの間にある九駅に、新駅を四つ増やします。この区間を、車いすなどでも乗り降りしやすい超低床車両が十五分間隔(現行三十―六十分間隔)で走ります。料金は二百円。将来的には、新幹線建設に伴って高架化される富山駅に乗り入れ、駅南を走る市電と接続することになっています。

 また、路面電車の利用圏域を拡大するために、岩瀬浜駅と浜黒崎地域、蓮町駅と四方地域を結ぶフィーダーバスの導入も検討され、路面電車の開通とあわせて一年間の試行運転が計画されています。

 富山市は二〇〇三年に路面電車化を表明。沿線住民へのアンケート調査などを行った「北陸線・ローカル線の存続と公共交通をよくする富山の会(略称・公共交通をよくする富山の会)」は、さまざまな提案や要望をしてきました。JRに鉄道資産の無償譲渡を求めるよう富山市に申し入れてきました。実質無償譲渡が実現。全区間での十五分間隔運行などがとり入れられています。

 蓮町駅で学校帰りの電車を待っていた女子高生(16)は、「本数がいっぱいできるのはうれしい。でも、運賃(富山駅まで百八十円)があがるのは厳しい。二十円でも貴重。富山駅からは地鉄(富山地方鉄道)か市電に乗り換えている」と話します。

■改めて申し入れ

 昨年十一月には、運賃などにかんして、改めて申し入れ。将来的に接続する地鉄路面電車とはいまから一体的な運賃体系にすることや、路線バスなども含めたゾーン運賃制の導入などを求めました。市当局は、「必要性は感じているが、考えさせてほしい」と回答。現在は「国土交通省と協議中」としています。

 富山駅北口で下車してからの乗り継ぎの問題や、万葉線の新型低床車両(高岡市)の脱線事故を教訓として、運行の安全性を十分検討すること、降積雪や凍結時も定時運行を確保できるようにすることも求めました。

■住民参加もっと

 同会の世話人の一人・酒井久雄さんは、「沿線の住民から、駅の改修により、ホームに出るのに、現在より遠回りをしなければならないのではないかとの相談がありました。駅の改修にあたっても、もっと住民参加が進むように求めていきたい」と語っていました。

 同会では、江戸時代の後半、日本海有数の北前船(バイ船)港町として栄えた岩瀬浜地域の文化に触れたり、一九二〇年代(大正末〜昭和初期)からの富山港線の歴史をたどるとりくみもしてきました。富岩運河と富山港線を生かした回遊性あるまちづくりを提案しています。(富山県 中本明子)


■中高生らが存続へ運動

■茨城

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 「通学の足、地域住民の足を守ろう」――。茨城県内の高校生が鉄道を守る運動に立ち上がっています。

■廃線になったが

 同県内では日立市と常陸太田市を結ぶ日立電鉄線(十八・一キロ)がことし三月末で廃線になりました。沿線高校の生徒会は「日立電鉄線の維持存続を求める生徒会連絡会」を結成し、「通勤・通学、通院の足を奪わないで」と沿線住民から署名を集め、同線を運営する日立電鉄本社、県、地元の日立、常陸太田の両市に提出。公的支援による存続を求めてきました。

 存続をアピールするイベントを開催するとともに、交通問題に詳しい専門家を招いた学習会を積み重ね、鉄道が公共交通のカナメで、バスに比べて定時性、速達性、大量輸送性に優れ、環境にやさしい乗り物であることを学んできました。

■存続に危機感

 廃線になった同線の常陸太田市側の起点駅「常北太田」駅と隣接するJR水郡(すいぐん)線「常陸太田」駅の乗降客がほぼ同数であることから、高校生らはJR線存続に強い危機感を表明。十月十五日には「多くの高校生が利用する水郡線を考えよう」と那珂市の県立那珂高校で「高校生水郡線サミット」を開きました。同線は国鉄時代に廃線がとりざたされたこともあるローカル線。▽水戸―上菅谷(那珂市)―安積永盛(福島県郡山市)間(百三十七・五キロ)▽上菅谷―常陸太田間(九・五キロ)――を結んでいます。

 サミットには九つの高校から約六十人の生徒が集い、このなかで出された意見や十九の高校の二千四百人を超える生徒から集めたアンケート結果をもとに、通学・帰宅時間帯の増発や増結、安全確保などを求めたJRへの要望書を確認。今後はJRとの懇談なども予定しています。県立佐竹高校生徒会長の小室早紀子さんは「日立電鉄線の存続運動のなかで、いろんなことを学んできました。鉄道はなくしてはならない」と語ります。

■「応援団」つくる

 このサミットには石岡市と鉾田市を結ぶ鹿島鉄道(二十七・二キロ)の存続を求めている「鹿島鉄道沿線中高生徒会連絡会」(かしてつ応援団、九高校七中学校の生徒会で構成)の県立小川高校の生徒も参加。公的支援による存続を求める署名への協力を訴えました。

 経営難に陥っている同鉄道ですが、こちらは二〇〇二年度から県と沿線自治体の公的支援を受けて運行中。公的支援が受けられるのは〇六年度まで。〇七年度以降も運行するには公的支援の継続が不可欠となっています。

 「かしてつ応援団」は駅のクリーン作戦、七夕やクリスマス時の駅舎の飾りつけ、募金をもとにした割引切符の販売など地元密着型の活動を展開。十二月上旬の署名提出をめざしスーパー前や主要駅頭で署名への協力を訴えています。署名は県、沿線自治体などでつくる鹿島鉄道対策協議会に提出されます。(茨城県 栗田定一)


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