2005年11月4日(金)「しんぶん赤旗」

主張

袖ケ浦市の住民投票

まちづくりは住民の意思で


 千葉県袖ケ浦市(人口約六万人)で市が推進する袖ケ浦駅北側地区整備事業の是非を問う住民投票が行われました(十月二十三日)。投票率58%で、「反対」(一七四五六票)が「賛成」(九六二一票)を大きく上回りました。市長は「民意を厳粛に受けとめる」といっており、市として計画を見直すのが当然です。

 今回の住民投票で、県とも合意のうえ市が決めた都市計画事業に対し、「いったんやめよ」という市民の審判がくだりました。行政の一方的なやり方に歯止めをかけ、住民参加のまちづくりに切りかえようとする、全国的にみても希望のわく新たな動きです。

■利権と無駄を排除

 JR内房線・袖ケ浦駅の北側は、ほとんど人家もなく、空地が広がっています。東京湾横断道路・アクアラインの建設などもあり、「バブル期に一反(三百坪)あたり一億円で買った人もいる」(地元不動産業者)とのこと。以前、駅北側の百四十二ヘクタールを民間主体の区画整理で開発しようとした計画がありましたが、バブル崩壊にともないつぶれました。

 今回問題になった事業は市施行で、規模こそ四十九ヘクタールと縮小したものの、基本的な発想はバブル時代と大差ありません。

 一千戸分の宅地を造成して分譲する。接続先も定かでない四車線の都市計画道路を四本もつくる。南側の整備だけであきたらず、北側にも広い駅前広場をつくる。事業費は約百八十三億円。市の一般会計予算にも匹敵するお金を使いながら、採算の見通しもない。開発予定地の地権者に市長や推進派の一部市議、その親族らが名を連ねていることもあり、“利権のにおい”を感じた人も少なくありません。こんなことに税金が無駄につかわれてはたまらない―市民の間に疑問と懸念が急速に広がりました。

 もちろん、そこまでには、粘り強い市民の運動がありました。

 市議会では、開発推進派議員の会社と市の癒着問題をとりあげた日本共産党の篠崎市議に対して、懲罰動議を可決する事態までありましたが(昨年九月議会)、逆に、開発推進派への批判が高まりました。

 計画をいったんとめ、見直そうという住民の運動には、日本共産党や保守系の市議、市の元助役や自治会関係者、教職員、開発地の地権者も参加しました。

 昨年十月の市議選では、この問題が大きな争点となり、開発推進勢力が多数だった議会の力関係は逆転しました。

 にもかかわらず今年一月、開発事業の都市計画決定が公告されました。これに対して市民は、住民投票の実施を要求。実施条例制定のための直接請求署名をよびかけました。四、五月の一カ月間に一万三千人以上が賛同署名し、七月の臨時市議会は十二対九で住民投票実施条例を可決しました。

■民主主義と自治の基本

 まちづくりは、そこで暮らす住民の意向を無視しては成り立たないはずです。これは民主主義と地方自治の基本ですが、無視される場合が少なくありません。そんななか、袖ケ浦の市民は自分たちの声と行動で、本来のまちづくりのあり方を示しました。住民運動で中心的に活動してきた市民は「市の文化や福祉、教育をもっとよくし、住んでよかった、住みたいというまちにしたい」と語ります。

 こういう努力を全国に広げ、住みよいまちをふやすことにつなげたいものです。


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