2005年11月3日(木)「しんぶん赤旗」

独大連立に黄信号

社民党の一部が懐疑的に


 【ベルリン=片岡正明】ドイツの次期副首相兼労働社会相に内定していた社会民主党(SPD)のミュンテフェリング党首が三十一日に辞意を表明したことで、同党と保守のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との大連立交渉に黄信号がともっています。

 ミュンテフェリング党首が辞意を示したのは同党幹部会が決定した幹事長人事をめぐって。同党首らがワッサーヘーフェル氏を推薦したのにに対し、ウィチョレクツォイル経済協力開発相ら左派が推すナーレス氏が対立候補として出馬し、三十一日に幹部会で選挙が行われました。

 結果は三十五歳のナーレス氏が二十三対十四の大差で勝利。ナーレス氏は反グローバル化運動「アタック」や金属産業労組(IGメタル)と強いかかわりをもち、シュレーダー政権の社会保障解体の「改革」の多くに反対してきました。幹事長選挙では青年、女性の幹部会員が同氏を支持しました。背景には大連立で「社民党の主体性が失われる」と社民党の一部に懐疑的な見方が広がっていることがあります。

 九月の連邦議会選挙で、社民党は第二党に後退。社民党と90年連合・緑の党との連立政権下で進んだ社会保障解体に反対する社会的弱者の声を代表した左翼党が躍進したことで、社民党内部にはこの立場を考慮しないと同党がさらに弱体化するとの危機感があります。

 連立交渉では、財政赤字を三百五十億ユーロ削減するための緊縮予算や年金受給年齢の六十五歳から六十七歳への引き上げがすでに合意されています。

 さらに財政赤字削減のために付加価値税の増税の可能性も強くなるなどの見通しとなってきました。このため、従来の社民党左派よりさらに幅広い層が大連立に懐疑的になっています。

 ミュンテフェリング氏は、次期副首相兼労働社会相のポストには就任することを確認しましたが、権威失墜の同氏が率いる社民党代表団で連立交渉がどう進むかは微妙です。

 一方、CSUのシュトイバー党首も「ミュンテフェリング氏は連立交渉の支柱であり状況が変わった」として、三十一日、内定していた経済・技術相就任をやめると言明しました。

 左翼党のギジ連邦議会会派共同議長は「社民党の中で伝統的な社会民主主義への回帰の声が高まり、党内討論が始まっている」との見方を示しました。


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