2005年11月3日(木)「しんぶん赤旗」

主張

ATM盗撮

預金者保護にどれだけ真剣か


 UFJ銀行の現金自動預払機(ATM)に隠しカメラを仕掛け、カードの出し入れや暗証番号の入力などを盗撮する事件が起きました。UFJ銀行の最初の発表(十月十八日)では、どの店舗だったのか特定しませんでした。一日の発表では、盗撮の可能性があるのは、東京、埼玉、千葉、神奈川の五十二店舗(無人)で、期間は、八月二十九日から十月十三日までだと明らかにしました。

 容疑者が一人逮捕されていますが、組織的な犯罪であることは確実です。徹底した捜査と、再発防止が強く求められます。

■客にリスク負わせてきた

 今回の盗撮事件では、ATMの正面にキャンペーン用の小箱を張り付けていたことが、小型カメラを隠すのに利用されました。カード犯罪が横行するなかで、利用客を守ることについて、どれほど神経を使っていたのかが問われます。

 UFJ銀行は、「預金引出し等の被害事例は確認されておりません」と言っていますが、預金者にとっては、暗証番号など重大な個人情報をATMコーナーで盗撮されたこと自体が大変な被害です。UFJ銀行の「お詫(わ)び」は、その重大性を認識しているのかどうか疑われる内容です。一カ月半も盗撮に気づかないようでは、店舗の管理責任を果たしているとはいえません。盗撮のあった店舗名の公表が二週間後というのも、被害防止の緊急性に照らして疑問が残ります。

 もともと、無人ATMコーナーが増えてきたのは、銀行が、支店を次々と統廃合するリストラを進めてきたからです。狭いスペースに四、五台のATMを設置する例が多く、徹底的にコストを削っています。

 そのせいで、利用客は、炎天下でも、雨や雪でも歩道に並ばされ、操作をのぞき見されないかなど、さまざまな不便、不安を感じています。

 無人ATMコーナーの増加に伴い、偽造・盗難キャッシュカードでの預金引き出し被害が増えました。銀行側が、利潤追求・コスト削減を優先して、安全なシステム作りを後回しにした結果です。にもかかわらず、銀行側は、預金者の被害をほとんど補償してきませんでした。リスクは客に負わせてきたのです。

 これが、社会的な大問題になり、八月には、預金者保護法が成立しました(来年二月施行)。ATMを通じた預貯金の不正引き出しによる被害を、原則として、金融機関が補償することにした点で、重要な前進です。被害防止のため、金融機関に、新しい認証技術の開発や情報漏えい防止なども求めています。

 ただ、預金者保護法が補償の対象としているのは、ATMからの不正な預金払い戻しや借り入れの被害で、原則として、預金者の届け出から三十日前までのものです。預金者が補償を受けるには、金融機関と警察に速やかに届け出たうえで、被害状況を説明する必要があります。

■全面的な補償制度を

 預金者保護法は、盗難通帳などを使った窓口での不正引き出しによる被害を補償の対象にしていません。盗難通帳による被害は、二〇〇〇年度から〇四年度までの五年間で百三億円余。同時期の偽造カードなどによる被害の約八倍です(全銀協調査)。被害の実態に照らしても、窓口取引を含む全面的な補償制度を、急いで確立する必要があります。

 ATMコーナーでも窓口でも、客の安全と預金を守る責任は銀行にあります。それを肝に銘じた、誠実かつ真剣な対応をすべきです。


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