2005年11月2日(水)「しんぶん赤旗」

主張

プリオン専門調査会

これで「輸入再開」は早計


 BSE(牛海綿状脳症)をめぐる米国産とカナダ産の牛肉の安全性について、厚生労働省と農林水産省から諮問を受けていた内閣府・食品安全委員会のプリオン専門調査会が、答申案をまとめました。

■評価は困難なのになぜ

 答申案は、米国・カナダのBSEリスク(危険性)を、日本と比較した場合、科学的に同等かどうか「評価することは困難」としました。全頭検査を実施しデータがそろっている日本に比べ、米国・カナダのデータは質・量ともに不明な点が多いためです。

 “評価が困難”なのだから、政府は、米国産牛肉の輸入再開への結論はだせないはずです。

 ところが、政府は、「答申が出れば、具体的な輸入再開手続きの決定まで長い期間はかからないだろう」(農水省の石原事務次官)とのべています。

 答申案に盛り込まれた、日米の「リスクの差は非常に小さい」の部分を米国・カナダ産牛肉の輸入再開へのお墨付きとして最大限利用する態度です。

 しかし、この日米の「差は非常に小さい」とした部分も、“全頭からの特定危険部位の除去、二十カ月齢以下の牛”との条件を守ると仮定した上での評価です。この条件が守られなければ、評価結果は「異なったものになる」と、答申案はのべています。

 政府が、「差は非常に小さい」という部分を取り出して、鬼の首をとったように扱い、輸入再開へと踏み出すとすれば、専門家による評価をねじまげるものです。

 答申案に込められている専門家の意見は、結論への付帯事項にあらわれています。

 特定危険部位の除去については、米国・カナダにおけると畜場での監視が不明であり、実効性に疑問が残る。

 BSE汚染状況を正確に把握するために検査の継続が必要であり、検査対象に健康な牛も含める。

 BSEの増幅をとめるには特定危険部位の利用を禁止し、交差汚染を防止するために牛以外の動物の飼料への利用も禁止する―。

 科学的な検討を尊重するというなら、こうした意見に十分耳をかたむけるべきです。

 もともと、厚生労働省や農林水産省の諮問にある、特定危険部位の除去と二十カ月齢以下という条件を守れば、安全であるとは限りません。BSE検査抜きの牛肉が輸入されてくること自体が、問題です。

 その点では、日本は、食肉処理される牛のBSE検査の対象基準が、全頭から二十一カ月以上に緩和されたとはいえ、全自治体が独自に全頭検査を継続しており、国の費用負担は従来通りです。BSE検査をしている国産牛と、検査なしの米国産牛肉では、安全性で比べることのできない差があります。

■輸入牛にも全頭検査を

 米政府は、今年四月、日本の食品安全委員会にたいし、BSE検査の対象を、三十カ月齢以上に引き上げるよう、意見書を出しています。

 ここで、輸入再開への道を開くなら、国内のBSE対策はいっそう後退する危険性があります。

 米国・カナダ産牛肉をはじめ輸入牛肉についても、全頭検査、特定危険部位の完全除去、トレーサビリティ(生産・流通の経歴が追跡できる仕組み)の体制を求めていくことが大事になっています。

 そうしてこそ、国産牛との同等性を確保できます。


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