2005年10月10日(月)「しんぶん赤旗」

七三一部隊の教訓は

保団連シンポ 医師の戦争責任探る


 戦後六十年、医師・医学者の戦争責任を考えるシンポジウムが九日、大阪府内で開かれました。主催は、医師・歯科医師十万人以上を組織する全国保険医団体連合会(保団連・室生昇会長)。八日から開かれている保団連・医療研究集会での企画の一つ。中国から歴史研究者を招き、医学者が深くかかわった七三一部隊の教訓を探りました。三百人以上の参加者が発言を真剣に聞きました。

 辛培林・黒竜江省社会科学院歴史研究所研究員は、七三一部隊の人体実験による犠牲者数が、関東軍憲兵隊の資料に基づき通説の三千人をはるかにこえる七千―八千人と報告しました。

 「厳粛に訴えたい」と前置きして辛氏はこうのべました。「戦争責任は日本政府にある。しかし、七三一部隊の幹部はみな医学者だ。人道的な医学を汚したのは事実。この点で日本の医師・医学者は深く反省し、教訓とすべきではないか」

 日本側から常石敬一・神奈川大教授が報告。同部隊がアメリカに実験データを提供した闇取引で免罪され、戦後の大学、学会、企業の幹部となった真相を明らかに。戦後、元隊員が同部隊の実験結果を使って論文を発表し、博士号を授与された事例をあげました。「なぜ人体実験に基づく学位論文を受け取ったのか。医学会の体質を問いたい」とのべました。

 ドイツとの比較で日本医学界の戦争責任について山口研一郎医師が発言しました。ドイツでは八〇年代、医師団体が自らナチスに加担した医師の責任を徹底的に追及した例を紹介。「ナチス時代の過ちを克服したことで、患者の医師への信頼が高まり、日本とは逆に医療紛争裁判は減少した」

 報告者の歩平・中国社会科学院近代史研究所所長は、日本・中国・韓国の研究者による共同教材の中国側主要メンバーです。「戦争認識の差がアジア各国間の相互理解の壁」と指摘。戦争被害が各国民の戦争認識だとして、日本人に加害の歴史事実を究明する努力を求めました。

 また、中国人は保険医協会などの反核平和運動が日本にあることを知らないので「日本の平和運動や思想を知らせてほしい」とのべ、「私たちも日本の医師・医学者とともに、過去の負の遺産を克服し、未来に向かいたい」とのべました。

 ▼七三一部隊 一九三六年、現中国・黒龍江省のハルビン郊外に設営された関東軍防疫給水部のこと。隊長は石井四郎(故人)。生物(細菌)兵器の研究・実験を行い、実戦も展開した。生体実験で中国・ロシア・朝鮮人らが犠牲に。ほかに同様の部隊が四カ所。東京の陸軍軍医学校防疫研究室を中心に東大、京大など各大学の医学研究者を各部隊に動員するネットワークができていた。


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