2005年10月7日(金)「しんぶん赤旗」
印パ、多分野で和解
産業交流・ビザ延長・安全保障
領土問題 解決に糸口
【ニューデリー=豊田栄光】カシミール地方の領土紛争を抱えるインドとパキスタンの間では、関係改善へ向けた協議が多分野で進み、領土紛争の解決へ向けた動きもスローペースながら着実に前進しています。両国外相は三、四の両日、パキスタンの首都イスラマバードで会談し、成果を共同声明にまとめ発表しました。
注目を集めたのは民間交流推進のための合同委員会の復活。一九八九年以来十六年ぶりです。農業、教育、情報産業、観光など優先八分野の実務者会合を設置します。
インド側は交流促進のため、査証(ビザ)の期間を最大九十日に延長することや、宗教巡礼、商業、学生用の査証項目の新設を提案しました。
共同声明は両国を結ぶバス路線の新設交渉の進展を歓迎しました。九月二十八日、アムリツァル(インド側)・ラホール(パキスタン側)間の路線協議が終了、十一月には営業が始まります。別の二路線の交渉も進展しています。
カシミール地方の実効支配ラインをまたいだスリナガル(インド側)とムザファラバード(パキスタン側)間のトラック運送業認可(バス路線は開通済み)についても、十二月から協議が始まります。
■包括会議が奏功
安全保障の面では、この三日、弾道ミサイル実験の事前通告協定に調印しました。
昨年から続けてきた核兵器に関する信頼醸成措置の専門家会合の成果です。沿岸警備隊間のホットライン開設でも合意しました。
両国は二〇〇三年十一月、実効支配ラインでの停戦に合意。〇四年一月には首脳会談が開かれ、関係改善へ向けた包括協議を行うことで一致。それ以降、多くの分野で専門家会議や実務者会合が行われてきました。
〇四年三月には両国で盛んなクリケット(球技の一種)の親善試合がパキスタンで十四年ぶりに開催され、インド人八千人に渡航ビザが発給されました。
今回の外相会談では、カシミール紛争を解決する糸口が見えました。「世界一標高の高い戦場」と呼ばれるシアチェン問題の若干の進展です。シアチェンはカシミール北部の標高六千メートルの氷河地帯。インドが八四年に占領し、パキスタンは撤退を要求しています。
■撤退で両国合意
両国外相は、来年一月の次期包括協議が始まる前に、シアチェン問題で「共通の理解に達する」ことを目指す姿勢を打ち出しました。ムガジー印国防相は九月二十八日、どこまで撤退するかなどの問題が残っているとしながらも、「両国は撤退では同意している」と語っています。
カシミール帰属の確定という最終和平にはまだまだ遠い道のりですが、両国は今後も「誠実に対話を続けていく」としています。
■12月に合同博覧会
【ニューデリー=豊田栄光】インドとパキスタン二カ国による初の国際博覧会が十二月一日から四日まで、インドのパンジャブ州アムリツァルで開催されることが五日明らかになりました。パンジャブ州商工会議所が発表しました。
インドからは少なくとも二百企業が、パキスタンからは百企業が参加する予定です。開催日前日には州首相主催の歓迎式典も行われます。
昨年度の両国間の直接貿易は、前年度比74%増の六億ドル(約六百八十億円)と大幅に伸びています。しかし、ドバイなど第三国を経由した貿易は三十五億ドル(約三千九百五十億円)となっています。
カシミール地方の領土問題を抱える両国は直接往来が少ないのが現状です。両国政府は四日、八九年以来凍結されていた貿易など民間交流の推進を話し合う合同委員会を復活。博覧会が直接貿易拡大の契機になることが期待されています。