2005年10月7日(金)「しんぶん赤旗」

主張

住宅問題

住まいを脅かす「構造化改革」


 住まいは生活に欠かせません。震災や台風被害で住居を失ったときなどは、とくに深刻です。失業や病気でローンや家賃支払いが滞り、住み慣れた住まいを去らなければならないこともあります。

 年金生活で家賃が払いきれない。低家賃の公営住宅に入りたいが応募倍率が高く、何度申し込んでも当たらない。民間賃貸住宅も高齢や失業を理由に入居を拒否される―。

 住宅問題は、とりわけ高齢者や低所得者に顕著に表れます。

■徹底した市場放任に

 若者の生活困窮者が増え、居住不安に襲われていることも新しい特徴です。不安定雇用で収入が途絶え、多重債務に陥り、漫画喫茶に寝泊まりする若者もいるほどです。

 安全で良好な住宅の確保は人々の共通の願いです。以前の住宅政策は、公営住宅法などで、住宅に困窮する人々に低廉な住宅を供給することをうたい、不十分ながらナショナルミニマム(国民に保障すべき必要最低限の生活水準)としての住宅保障を掲げていました。

 ところが、小泉自公政権の「民にできることは民に」という民間大企業のための「改革」によって、居住保障が揺らいでいます。

 国交省が昨年末に発表した「住宅政策改革要綱」では、「多様化・高度化する居住ニーズに対応するためには市場による対応が最も効果的」として二〇〇五、〇六年の二年間で住宅政策について集中的な「改革」に取り組むとしています。

 具体的には、「要綱」は「(1)市場重視型の新たな住宅金融システムへの移行(公庫改革)(2)公的賃貸住宅の有効活用による住宅セーフティーネット(安全網)の機能向上(公営住宅改革)(3)都市再生機構による民間都市再生支援の推進(公団改革)」を打ち出しました。

 つまり、従来の住宅政策の根幹であった、持ち家支援の住宅金融公庫融資はやめて銀行などの融資に移行する、公営住宅はもう建てず既存住宅を活用、公団住宅建設から全面撤退し都市再生という名の再開発事業に変えていくというのです。

 これは徹底した市場放任です。住宅政策への公的介入は「民業を圧迫するから撤退せよ」、と主張してきた財界・民間大企業の要求に応え、もうけ口を与えるものです。事実、銀行は、住宅融資にシフトし、大手住宅メーカーも一斉に住宅ローン専門会社を設立、新しい住宅市場の構築に虎視眈々(たんたん)としています。

 こうした結果が何を生むかは明らかです。厳しい選別融資で低所得・高齢者の住宅融資はほぼ不可能となります。公営・公団住宅は供給されず、住宅のセーフティーネットがずたずたにされ居住安定は著しく損なわれることになるでしょう。

■居住保障の確保こそ

 住宅政策への政府や地方自治体の政策的な介入は不可欠です。持ち家取得への支援と公共賃貸住宅の建設という“車の両輪”が欠かせません。家賃の支払いやローンの軽減を図るため、家賃補助や住宅手当などの拡充も求められています。

 その点で、居住保障を求める運動が粘り強く続けられていることは注目されます。九月二十九日には居住の権利を定めた「住居法」実現を目指す「住居法実現実行委員会」が結成され、居住者団体などの住み手と住宅関係労組などが力を合わせ、国民の居住保障要求の声を上げようと運動を進めています。

 何よりも国民の居住保障を確保する住宅政策こそがいま必要です。


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