2005年10月6日(木)「しんぶん赤旗」

主張

水俣病認定

すべての被害者を救済せよ


 水俣病の未認定患者五十人が国家賠償を求めて熊本地裁に提訴した問題で、小池百合子環境相は、水俣病と認定する「基準の見直しは一切、考えていない」とのべました。

■行政の怠慢続けるのか

 小池氏は、昨年十月、最高裁判決が、国と県の責任を認め、現行の認定基準を否定したにもかかわらず、国会で「判断条件を見直す必要がある、このようには考えておりません」と答弁しています。

 判決を“厳粛に受け止める”といいながら、認定基準の見直しを拒否している小泉内閣の姿勢こそが、大問題だということをまったく理解していない発言です。

 水俣病は、熊本県水俣市のチッソ水俣工場が、メチル水銀を不知火海に排出し続けたため、そのメチル水銀を蓄積した魚介類を食べた住民が発病した神経疾患です。最高裁判決は、「一九六〇年一月の段階で、国と県が適切な規制権限を行使しなかったのは、著しく合理性を欠き違法」としました。四十数年にわたる行政の怠慢により「被害が拡大する結果」となったと、最高裁判決は判断したのです。

 これまでどおりでよしとするなら、行政の怠慢の繰り返しであり、司法の判断を踏みにじるものです。

 環境省は、最高裁判決を受けて、今年四月に「今後の水俣病対策について」を出しました。これに基づいて、今月十三日から、医療費の自己負担分を支給する保健手帳の交付受け付けを始めます。しかし、この保健手帳の交付は、水俣病認定を受けていないことを前提としており、認定申請や裁判をおこなっている患者を対象外としています。

 従来の認定基準を変えず、こんな不誠実な対応しかしないのでは、政府への不信感が増すばかりです。

 水俣病は、一九五六年五月に公式確認されてから、来年で五十年になります。しかし、政府は、住民の被害の実態調査を一度も行っていません。国会で日本共産党の仁比聡平参院議員が「これまで八代海、不知火海沿岸地域に居住歴があるという住民についてメチル水銀が健康に与えた影響把握のための健康調査を実施したことがありますか」と質問したのにたいし、希望者にたいする検診のみで、住民のところに足を運んでの実態調査は皆無であることが明らかになりました(今年三月三十一日参院国土交通委員会)。

 政府は、被害規模をどのようにつかんでいるかと問われ、「これまで患者認定された約三千人、一九九五年の協議で救済された約一万二千人、最高裁判決に基づく約五十人に加え、最高裁の判決後に、新たに認定申請した千三百人」と答えました。

 ところが、その後、認定申請した患者は熊本、鹿児島両県で三千人以上に増えています。

 救済されずにきた被害者が、多数いることを示しています。

■被害の実態調査を

 熊本県は、昨年十一月に示した対策案で、「不知火海沿岸に居住歴のある約四十七万人に対するメチル水銀影響調査」を掲げています。

 最高裁判決は、被害者置き去りの政府の環境行政をきびしく批判しました。小泉内閣は、救済されずにきた患者が、最高裁判決後に認定申請を行ったり、裁判に訴えたりしていることを、もっと真剣に受け止めるべきです。

 すべての被害者を救済するために、認定基準をただちに見直すとともに、沿岸に居住歴のある住民の健康調査、環境調査を実施すべきです。


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