2005年10月3日(月)「しんぶん赤旗」

パレスチナ・イスラエル 衝突ぼっ発から5年 

暴力の応酬  和平の道は


 第二次インティファーダ(民衆蜂起)と呼ばれるイスラエルとパレスチナの衝突がぼっ発してから九月末で丸五年が過ぎました。先にパレスチナ自治区・ガザからイスラエルの軍と入植者が撤退しましたが、暴力の応酬はつづき、和平交渉再開の展望は依然として見えていません。(カイロ=小泉大介)


■貧困ライン以下61%

 衝突は双方の経済にも打撃を与えました。イスラエルでは当初、観光収入の落ち込みなどで停滞がつづきました。しかし、現在はそれも回復、輸出の伸びも顕著で、今年度の経済成長は5%が見込まれています。

 一方、イスラエルの労働市場に強く依存してきたパレスチナ経済はいまも極度の不振にあえいでいます。自治政府のスヌクロト経済相によれば、一九九九年の失業率は12%でしたが、二〇〇〇年以降急増、現在は29%の高率のままです。

 とくに生活環境が劣悪なガザでは失業率が五割を超えているといわれます。ヨルダン川西岸とガザの総人口約三百七十万のうち、百五十万人が収入源を断たれた状態で、国連などの援助に頼っています。

 国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告書では、〇四年度の国内総生産(GDP)は九九年に比べ15%低下し、一人当たりの国民総所得(GNI)は同じ期間に33%減少、61%の家族が貧困ライン(月三百五十ドル)以下の生活を余儀なくされています。

 国連の見積もりでは、この五年間だけでガザを中心に難民キャンプの家屋約三千戸がイスラエル軍により破壊されました。これまでに再建されたのは三分の一以下で、多くが現在もテントや親せき宅などで生活を送っているとみられます。

■西岸では入植地拡大

 イスラエルのシャロン首相はガザからの八千人余の入植者と軍の撤退を決断し、九月十二日までに完了しました。パレスチナ人、イスラエル人をはじめ国際社会をあげて高まる和平への機運に押されたもので、和平に向けた一歩として内外の期待を集めました。ところがイスラエル軍はそのわずか二週間後には同地への空爆を再開しました。

 ガザ撤退後、同地の経済が回復するかどうかは検問所や国境管理問題を解決し、パレスチナ人の移動の自由を確保することが肝心ですが、双方の話し合いは難航したままです。

 重大なのは、イスラエル政府がガザから撤退する一方で、ヨルダン川西岸では逆に分離壁建設と入植地拡大でパレスチナ支配をより強めていることです。アリエルやマアレアドミムなど数万人規模の大規模入植地は維持、強化し、分離壁によってイスラエル側に併合しようとしています。

 先のUNCTAD報告は、分離壁建設によって、〇三年から〇四年半ばまでにパレスチナの可耕地の15%が失われたとしています。

 イスラエル政府は分離壁建設の理由に「テロリストの侵入阻止」を挙げてきました。シャロン首相顧問のアラド氏は九月二十八日、「和平交渉の停滞がつづけば、一方的撤退が戦略となる余地が出てくる」とのべ、交渉によることなく、分離壁を西岸におけるイスラエル領とパレスチナ領の恒久的な境界とする可能性を示唆しました。

■交渉再開の努力カギ

 シャロン首相は故アラファト・パレスチナ自治政府議長を「テロリスト」とみなし交渉を一貫して拒否してきました。アラファト議長が昨年十一月に死去し、アッバス新議長が誕生したことをうけ今年二月には首脳会談が実現し、相互停戦が宣言されました。

 しかし、「過激派組織の即時解体」を要求するシャロン首相と「政治参加による武装解除」をめざすアッバス議長との溝は埋まらず、和平をめぐる情勢は進展を見せていません。二日に予定されていた首脳会談も、ガザ情勢の悪化をうけ延期されました。

 和平にとって、パレスチナ過激派が暴力を停止することはもちろん必要不可欠です。しかし、イスラエル政府が西岸支配を強化するなどの一方的措置を停止し、和平交渉を再開する以外に暴力の連鎖から抜け出す道はない、これが、この五年間つづいた事態から導くべき最大の教訓といえます。


■発端は現首相の挑発

 五年間における衝突で双方の死者は約五千人(うち八割近くがパレスチナ人)に達しました。

 発端は、二〇〇〇年九月末、現イスラエル首相で当時野党リクード党首だったシャロン氏が、東エルサレム旧市街のイスラム教聖地を挑発的に訪問したことでした。

 パレスチナ人は、同年七月に、当時の米クリントン政権の仲介でおこなわれたイスラエル、パレスチナ両首脳による最終和平交渉が決裂したことにいら立ちを強めていました。シャロン首相のこの訪問をきっかけに、パレスチナ人とイスラエル治安部隊が衝突。以後、イスラエル軍のパレスチナ侵攻と過激派幹部の暗殺作戦が自爆テロなどパレスチナ過激派の攻撃を呼び、それへの反撃を口実にしたパレスチナ侵攻がさらに激化するという際限のない暴力の連鎖が拡大していきました。

 とくに〇一年九月の米同時多発テロ後、ブッシュ米政権が「対テロ」戦争を開始して以降、イスラエルのシャロン政権はパレスチナ自治政府を「テロ支援組織」と規定し、同年十二月以降は、西岸ラマラのパレスチナ自治政府議長府にも容赦のない攻撃を加え、自治区を再占領するなど本格的な攻撃を実施しました。


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